英語力は相当あるはず、だが正直英会話力はヤバい。。常々、日本から来る人に対して感じることである。一流大学、大学院などで高度な教育を受けた人でさえ日本にずっと住んでいる人の平均的な英会話能力はかなり低い。英語で読み書きをさせたらおそらく英語圏の人たちと同等か、もしくはそれ以上の正確さでこなす人も少なくないはず。それだけの高等教育を受けた人の多くが乏しい英会話力水準に留め置かれているというのは世界でも稀有なことのように思える。「お前だって海外に出る前は英語も聴くことも話すこともできなかっただろう」と言われれば確かにそうだ。

日本人の語学力

原因はよく分かる。中学から始まる英語の授業において会話の練習をすることを極めて少なく、そして巷に出ても全くと言って良いほど英語で話す機会がないからだ。日本が古来より外界からの来訪者の少ない島国であること、かつて一歩先に発展していた欧米諸国からも植民地化されなかったことは大きな原因だろう。単一民族の国として長い歴史を刻む間外国に干渉されることなく他の世界とは質を異にする独特の文化や習慣を育むこともできた。それが外国語会話習得の出遅れの引き換えだと思えば納得のしようはあるのかもしれない。

移民受け入れの機運

が、今その日本の歴史がターニングポイントにあることは否めない。日本人は人口が減ってゆくうえに高齢者の割合がどんどん増えている。人口ピラミッドが危機的な形状をしているのは専門家ならずともわかる。人口も活力も豊富な若年層が数少ない高齢者の生活を支えるという概念で戦後70年をかけて整備された年金や医療にかかる社会保障制度は逆に足かせとなり現役世代から次の世代の日本人を育てる余力を奪う。これは間違いなく大和民族の血脈維持にとって深刻な打撃である言わざるを得ない。だが、それは民族の危機ではあっても日本という国の危機であるとは限らない、決してそうしてはならない。

これはあくまで僕の個人的見解として捉えてほしいが、これから日本は外国から移民を受け入れてゆくだろう。移民受け入れは特に単一民族で独自の文化を持った日本では情緒的な抵抗が大きい。移民政策を口にすれば政治家は得票を減らしやすく声高には主張しにくい部分でもある。だが大和民族が多く住む日本という場所を維持するためには海外から渡ってくる人を受け入れるという選択肢は避けることができないはずだ。好む、好まない、ではない。

現在日本にはすでに230万人の外国人が住んでいる。公式に移民の受け入れをしていないが日本には留学生や技術実習制度で外国人が数多く入国している。そして、ビザが切れても不法滞在で日本に居続ける外国人も多い。そのほとんどは実際に必要な労働力として日本のあらゆる職場で働いている。コンビニの店員の多くが日本人ではないことは誰でも知っている事実。学生だろうが、実習生だろうが、不法滞在者だろうがそれぞれの職場では不可欠なスタッフ。それが実際の需要なのだ。そして海外から人材を受け入れる必要性はこれからも強くなり続ける。様々な事情で法的な整備は遅れているがいずれは実情に合わせてゆかざるを得ないだろう。あくまで僕の見立てである。

日本に移民が来る時代の思考の切り替え

予測に対してどうするのかを対策するのは今を生きる投資家としての立場である。法整備の速度にもよるが現在上昇していて利回りが下がり気味の国内不動産。2020年の東京オリンピックの開催がひとつの過渡期と捉えらている向きも多いが移民受け入れの進度によってどうなるか。もし本格的な移民受け入れが始まれば人口が増える。住宅需要は再び上昇するはずだ。移民労働者が産業を下支えしてくれれば株式市場にも良い影響があるだろう。ただどうだろう。それは移民政策の条件次第ということもある。政府としては移民が税収に貢献し、高齢化の進む日本の困難な状況の解決になることを望むだろう。そのためには稼ぎの多い優秀な人材を受け入れたところだ。

だが、移民にランク付けをして有能な人材を選別して移住を奨励している先行国はすでにある。シンガポールやドバイなど。こうした地域は税率も低く有能な高額所得者が移住したくなる要素満載だ。もちろん彼らはそれを狙ってやっている。これまで閉ざしていた日本が移民を受け入れるからと言ってこちらが望む人たちを簡単に集められると短絡的に考えない方が良いかもしれない。政策の巧拙によって今より良い環境を求めて来る低所得者層がメインの移住者になるかもしれない。そうすると株式市場の動向にも微妙な変化が出てくるだろう。それならそれなりの戦略を立てるまでだ。

個人としてその時代を生きる本国人の我々はどのような人生を思い描くべきか。巷で彼らと外国語を交わす機会も増えるだろうか。冒頭にあげたような状況も変わってくるだろう。あらゆるものが急速に変質してゆく。そしてその流れは誰にも止められない。そんな時代には国内にとどまらず自分たちから率先して外へ打って出ることも必要だ。従来から国内にある仕事は移民に担ってもらい、自分たちはこれからの時代の世界を舞台に情報を集め時代を切り拓く側にまわる。そんな未来が描けるのであれば悪くない。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須