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2021年11月24日、石油の国家備蓄の放出する方針が発表された。

石油備蓄は石油の急激な価格変動や石油供給量の減少に備えて石油を備蓄すること。備蓄の種類には国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄の3種類がある。国家備蓄は国が建設した備蓄基地に原油の形で貯めておくもの、民間備蓄は民間企業が持つ石油タンクに原油及び石油製品を在庫を多めに持つ形で貯めておくもの、産油国共同備蓄とは、政府の支援の下、日本国内の民間原油タンクを産油国の国営石油会社に貸与し、平時は当該社が東アジア向けの中継・備蓄基地として利用してもらい、日本への原油供給が不足する際は当原油タンクの在庫を国内向けに優先供給するものである。

石油備蓄放出

これらは「石油の備蓄の確保等に関する法律」に従って運用されている。国家備蓄は国内需要の90日分、民間備蓄は70日分以上と定められている。民間備蓄の放出は東日本大震災への緊急対応などの用途でこれまで数回行われているが国家備蓄の放出は今回がはじめてである。国家備蓄は現在法定目標の国内需要の90日分を大きく上回る145日分が確保されており、今回は法律改正の必要のない余剰分(約55日分)の範囲内で放出されることになるようだ。

理由は高止まりしている原油価格の抑制。2021年11月現在WTI原油先物は1バレル70ドル台後半から80ドル台前半の価格で推移しているが北半球が冬に入りさらに需要が増えてさらに価格が高騰することが懸念されるからだ。170円/lのガソリン価格は確かに高いし、離島では200円を超えるところもあるみたいなので何とかしてほしいのは間違いない。

意外な同調

今回アメリカのバイデン大統領が中国やインドなどの原油輸入国と歩調をあわせて石油備蓄をを放出することを決めた流れに日本も同調したかたちだ。大国が貯めていた原油を放出すれば需要は緩和されて輸入は減り原油価格は下がるはずだというのが思惑だろう。

これに対して産油国側は減産することで価格の維持を図ってくることが考えられる。12月2日に主要産油国で構成する「OPECプラス」の会合で減産に踏み込むかどうかは大きな注目点だ。産油国も昨年新型コロナのパンデミックが世界に広がったところで世界的な需要の落ち込みから一時期原油先物価格がマイナスを記録するという歴史的な大暴落があった。

価格が高騰した今となっては輸入側である我々はほぼ忘れてしまっているがその安値から回復する過程で産油国は販売価格が生産コストを下回る逆ザヤで赤字に苦しんだことは想像に難くない。彼らにしてみれば今の高値でボロ儲けしているというより、当時の赤字をやっと取り返している、というところかもしれない。

大国による備蓄放出が本当に原油価格を下げる効果があるのかどうかはわからない、答えは原油価格の動向にしかないのでそれを観察するだけだ。

共同歩調の理由

米国と中国、中国とインドが共同歩調を採るというのはある意味興味深いが違和感もある。この2カ国同士が対立軸にあるというのもそうだがアメリカと中国やインドはエネルギー環境が違うからだ。

アメリカは世界最大の産油国であり、民主党のバイデン政権の下では生産の鈍っているシェールガスやオイルサンドなども入れればまさにエネルギーはふんだんに持っている状態。その国が音頭を取ってエネルギー輸入国が貯めている虎の子の原油備蓄を「さあ、みんな一斉に放出して価格を下げようじゃないか!」とやっている構図になる。

これで相手国の安全保障上の能力を削ぐこともできるのでは、、というのは少々穿った見方だろうか。中国にとってはアメリカの呼びかけに応じるメリットは大きくないと思うが、大雨などして国産エネルギーである石炭の生産が滞ってるところに原油の高騰で採算の合わなくなった電力会社が電気を供給できずに停電も多発しているようなニュースもよく聞く。

本当に中国が備蓄放出に踏み切るのであればそれほどに困っていて、アメリカ発の大義名分が渡りに船だったということになるかもしれない。言葉はごまかしが効くが、数字や行動には真実が浮かび上がる。

さまざまなことが明らかになりそうな冬がやってくる。

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