京都高島屋で限定販売された人形100体が一人に買い占められたということがニュースになっていた。

それは「スーパードルフィー(SD)」という精巧な高級フィギュアで、有名な画家・ファッションデザイナーの故中原淳一氏の画を忠実に再現したもの。価格は1体124,000円と高価だが一部のファンにカルト的な人気を誇っていて、100体ぐらいなら一瞬で完売する。

京都高島屋におけるスーパードルフィー(SD)買い占め

2018年3月31日の発売日にその商品を求める200人以上が開店前から京都高島屋に並んでいた。先着順で1人当たり2体まで購入できるという条件だった。

結果、行列に並んでいた最初の50人が1人2体ずつ買って完売、それ以降の150人以上は朝から並んだにもかかわらず手に入れることができなかったことになる。実際そのときにはまだ商品は届いておらずまず整理券を配布して、整理券を受け取った人が再度店を訪れて購入するという段取りだった。そしていざ引き渡しのときに中国人とおぼしき一人の男性が店頭に現れて50人分の整理券を基に100体すべての代金を支払い商品を受け取って帰ったということである。1,240万円を現金払い。

先物投資化するネット物販

「転売目的の買い占めではないか?」というのがニュースのポイントである。この件に関連して買えなかった客やファンの憤りやそのまま商品を渡してしまった店側に対する批判などが巡っているらしいがその論議は他のメディアに譲る。僕が強く感じたのは「やはり昨今の物販はもはや投資に近いな」ということである。転売目的の買い占めであるのは間違いはないだろう。このスーパードルフィーは「SD娃」呼ばれて中国でも大人気なのである。中国の物販プラットフォームであるタオバオにはこの商品が予約販売されている。

価格はRMB2,000-RMB9,680(約34,000円-164,560円)と表示されているがまず高い方の価格で完売していると考えられる。売上は1,640万円。こうした人気商品は先に代金を受け取っておいて発売時に商品を確保して納品するということが可能だという。つまり買い付け資金の1,240万円はすでに支払いを受けた資金から捻出することができるということだ。

物販先物投資収支の試算

さて予約を受けている以上、セラーは何としてでも商品を確保しなければならない。一人当たり2体しか買えないから自分がどんなに早く並んでも金を持っていても確保できるのは2つ。そこでアルバイトを雇って他の客が行列を作る前に並んでもらう。都合、列の頭から50人を抑えられればすべての商品を確保できる。

アルバイトの時給は1,000円として午前5時から並んでもらうとすると、開店の10:00AMまで5時間。50人X1,000円X5時間=25万円が商品確保のコストだ。それさえできればセラーとしてはひと安心、あとは1体ずつ予約した中国のお客さんに発送すれば良い。送料はざっくり2,000円ぐらいだろうか、100個すべてを別の住所に送っても20万円。セラーの収支はざっくり以下のような感じか。

売上:1,640万円
仕入れ:1,240万円
経費(アルバイト+送料):45万円
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利益:355万円

将来手に入る商品を先に販売しておいて、引き渡しの時が来たら確保した商品を現物渡しする。これはまさに商品先物取引の現渡しである。ネット上の存在するタオバオやeBayなどの販売プラットフォームを利用すればメーカーや小売店などの従来のプロでなくてもこうした取引に簡単に参入できてしまう。そんな時代の物販現物投資ならぬ物販先物投資の事例だったようだ。

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