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1ドル=155円。34年ぶりの円安状態とのことだ。

当然その頃も自分はいたので、記録を見れば「あの頃はこんな感じだったのか、、確かに当時海外留学なんて高値の花で、金持ちの坊っちゃんやお嬢が行くものだったなぁ」と思いを馳せることはできる。

ドル円為替相場の記憶

しかしそのときの明確な記憶はない。おそらくその頃僕は学生で、海外に出たこともなく、国内で消費しているだけだったので、為替の変動などニュースで見ることはあっても自分の生活への影響は少なく無関心だったからだろう。為替の変動に対して感覚的な記憶が残るのは少なくとも働いて給料をもらい、一度ぐらい海外旅行に行く頃ではないだろうか。

34年前のと言えば1990年、バブル崩壊の年。その後日本円は急上昇し、4年後の1994年にははじめて1ドル=80円を上回ることになる。そしてその4年後の1998年に日本円は1ドル=147円台まで下落する。就職して日本からの輸出に携わったり、中国で勤務して外貨で給料をもらっていたその頃の記憶は鮮明だ。

その時々の円高や円安の環境下では良いことも悪いこともあった。1994年の円高のときは自分が担当していた自動車や機械の海外への輸出が壊滅的な打撃を受けた。そしてそれは当然ボーナスの減少となって跳ね返ってきた。逆に中国で働いていた1998年は米ドル建てでもらっていた給料が日本円に換算して毎月増えてゆくのを喜んでいた。給与所得者だった当時のささやかな思い出だ。

日中ゴルフプレー費用の逆転

話は変わるが、今回ほぼ20年ぶりにゴルフをやった。日本の取引先と中国人の顧客が日本でゴルフをプレーすることになり、自分が通訳として一緒に回らなければならなくなったのが理由だ。通訳をやるためにはあまり他のプレーヤーから離れることはできないので、そこそこ安定したショットでついて行かなければならない。20年ぶりにぶっつけ本番でコースに出るわけにはゆかないので、少し早めに日本に入り、前もって自分でラウンドして練習をした。

そこである事実に気づいた。僕が上海駐在時代にゴルフをやっていた頃、1回のプレー費用がだいたい平日でRMB400ぐらいだった。それは当時日本円に換算すると約6,000円だ。当時日本でプレーすると20,000円はかかったので、中国でのゴルフは日本人駐在員にとっては激安だったと言える。中国でゴルフをはじめた僕にはあまりわからなかったが、日本でゴルフをやってから中国駐在に来た人はこの絶好の機会にと浴びるようにプレーしていたのを憶えている。

で、2024年の日本。ネットでゴルフ場の一人予約を検索してみると平日1プレー5,000円〜7,000円というのが目に付く。これは現在ざっくり人民元に換算すると「250元〜350元」ということになる。現在中国で18ホール回ると安めのコースでもRMB1,000(20,000円)は下らない。

最近は決して好調とは言えないが、経済成長を遂げたインフレの中国と長期にわたるデフレ、そして円安環境下の日本のゴルフ事情が完全に逆転してしまっていたのだ。

「場所の分散」と「通貨の分散」の13年目

このメールマガジン【国境なき投資戦略】の配信開始は今から13年前の2011年。その当初から提唱し続けているのが、海外に銀行口座を開設し、日本に集中している資産の一部を移す「場所の分散」そして、為替の変動リスクを避けるため海外に移した資産を様々な通貨に分散する「通貨の分散」である。

「場所の分散」はもし日本が地政学的なリスクに見舞われた際に自分の資産すべてに影響が及ぶことを避ける対策、「通貨の分散」は日本円が暴落した場合でも世界レベルでの資産額の毀損を防ぐための対策だ。これらの対策の第一歩として、香港に赴きHSBC香港の口座を開設し、そこで複数の通貨を保有することを推奨した。

幸い、現時点では「場所の分散」に窮地を救われたという事態には陥っていないが、「通貨の分散」によって保有していた外貨が日本円の下落による資産の目減りを防いでいるということにはなっているのは間違いないはずだ。例えば今海外に行くと何もかもが非常に高く感じると思うが、当時HSBC香港に預金した外貨を出金して海外での消費に充てればそれほどでもないはずだ。

一方で、HSBC香港口座開設から長い時間が経ち、ついつい放置しすぎて口座を凍結させてしまったり、ATMカードの期限が切れているにも関わらず引っ越し後の住所変更をしていなかったために新しいカードが届かなかったり、パスポートの新発行によりNo.が変わってしまったりということも多く発生している。口座内の外貨の有効利用も含めて、この円安のタイミングは口座のメインテナンスを行なう良いきっかけになるのではないだろうか。

また、以前よりかなり厳しくなったとは言え、HSBC香港口座の新規開設も可能だ。まだ「場所の分散」と「通貨の分散」の対策ができていない人は検討してみると良いだろう。
 

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2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

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