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「信託(Trust)」お金や不動産、貴金属などを保有している者(委託者)が信頼できる人あるいは会社(受託者)にその財産を移転し、委託者自身あるいは委託者の家族等(受益者)のために、委託者が設定した目的に従ってその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度。

もし自分の莫大な財産を相続する人間が小学生の我が子しかいない場合、自分にもしものことが起こったら、、その子が相続したとして、お金の使い方もわからないし、もしかしたら悪い大人に財産をだまし取られてしまうかもしれない。その子が大人になり、判断力がついて財産を充分に活用して生きてゆけるようになるまで必要以上のお金は渡したくない、と考えるのは普通だろう。

信託(Trust)

そんなときに信託を活用すれば良い。

上のケースでは例えば子供が成人するまでは月々50万円ずつを払い出して、そのお金で寄宿学校の学費と生活費を賄う。そして子供が大学を卒業したら残りの財産の30%を渡し、充分に分別がついたと想像できる30歳の誕生日に残りの財産を渡す。それまでの間、受託者の手元にある信託資産はなるべく目減りをしないように、格付けの高い債券で運用する。というようなことを意向書(Letter of wishes)で信託に指示しておけば、自分の死後の憂いはかなり小さくなるはずだ。

生命保険と遺言書

死後の憂いを解消するものとしては他に「生命保険(Life Insurance)」や「遺言書(Will)」がある。生命保険に加入し、自分を被保険者(Life Insured)にして、家族を受取人(Beneficiary)に指定しておけば、自分が死亡した場合にそれらの人に死亡保障・保険金(Death Benefit)が支払われる。そうして自分の死後も大切な人たちの人生を金銭面で支えることができるのだ。

遺言書は被相続人が自分が死亡した場合にそれぞれの相続人に自分の財産のうち何をどれだけ渡すかという意思を書面にしたものだ。遺言書は法務局に保管してもらったり、公証人が関与して作成することにより、法的効力を持って取り扱われる。相続人たちが遺産を巡って骨肉の争いを繰り広げるようなことを遺言書で防ぐことができるのだ。信託はある意味生命保険と遺言書を両方合わせてより強化したものと言える。

自分の死亡と同時に保険金が支払われるのが生命保険だが、特に日本の生命保険の場合、受取人として指定できるのは原則として「配偶者と2親等以内の血族のみ」となっている。もし事実婚のパートナーや同性のパートナー、あるいは自分を献身的に介護してくれた他人などに感謝の気持ちを込めて保険金を渡したいという希望は叶わないのだ。また生命保険の死亡保障は被保険者の死亡後すぐに一括で払い出されてしまうので、その財産の処分の権限はすぐにすべて受取人に移ってしまう。冒頭に語ったエピソードのような心配は残ってしまうことになるのだ。

信託の優位点

さらに遺言書ではできない信託の機能として、多世代間に渡って財産の承継ができるというものがある。遺言書の効力は自分が死亡した時点での相続人にしか及ばない。財産はすべて次の承継者に渡ってしまった後の財産の処分に自分の意思を反映させることはできないのだ。仮に次の承継者が放蕩三昧の浪費家で合った場合、その財産を散財してしまうことも考えれる。そのような危険を感じた場合、信託を通じてその承継者には株や不動産などの所有権を与えずに定期的にある程度の現金を渡すように指示して、そのまた次の世代にしっかりした人間に望みを託すようなこともできる。

要するに信託は次の世代だけでなく、多世代に渡って資産の統制・管理を行ってゆくことが可能なのである。そして信託は柔軟な資産運用も可能である。株式の取引や不動産の経営・管理はもちろんのこと、信託から生命保険に加入することも可能だ。また、そこから寄付をしたり、慈善事業などに貢献することもできる。ただひとつの難点はその設立や運営のコストのハードルが高いということだろう。これだけの機能を備えているからにはある意味仕方のないことかもしれない。

「自分の死んだ後のことは関係ない」という考えるのはもちろん構わないと思う。しかし一定の規模の資産があり、自分の子や孫、その下の世代のことを考えて生きてゆきたい場合には信託は重要なツールとなるだろう。
 

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