对不起,此内容只适用于日本語。 For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

 

2019年6月12日、雨天。通行止めの場所から人いきれの中を徒歩で行く。数歩進むだけですれ違う人と何度も傘がぶつかる。参加者は皆、ユニフォームのように黒いTシャツを来ている。

夥しい人の吐息、汗の匂い。スマホの天気予報を見ると湿度は81%だが、そこだけはもはや100%に近いのではないかと感じる。ようやくデモの座り込みをしている場所に到着。もっとつぶさに見て回ろうと考えていたが正直環境的にかなりしんどい。何枚か写真を撮って、早々に地下鉄の駅から退散した。

香港では「逃亡犯条例」の改正に反対するデモが起きている。顧客やメルマガ読者の方から多くのお見舞いや心配の連絡をいただいている。この場を借りてお礼を申し上げたい、と同時に所感を含めて現状を伝えたい。6月9日(日)に発生した抗議デモの参加者は主催者側の発表では103万人とのこと(警察発表は24万人)香港の人口は740万人なので、主催者側の発表が正しければ全人口の14%(7人に1人)が参加したことになる。ちなみに9日に起きたデモのことを当日僕は知らずに過ごし、翌日にニュースで知った。フィリピン人の家政婦にパートタイムで自宅と事務所の掃除を頼んでいたので部屋の中でそれに立ち会っていたのだ。

大規模デモの起きたセントラルからコーズウェイベイは自宅から2km〜4kmぐらいの比較的近い範囲にあるのだが全然気づかなかった。自分の周りではいつもと変わらない日常があっただけである。なぜこんなにお見舞いの言葉をいただくのかは不思議な気持ちであるが、想像は難しくない。YouTubeなどで日本や他国のニュースを見てみると、まるで香港全土が混乱に陥っているように思えても無理もないほどの報道ぶりなのだ。

しかし実際は香港政府機関の周囲びごく限らた地域、面積にすると香港全体の1%以下の場所で起こっている出来事で、現場を見に行くためには冒頭のように少し苦労してたどり着かなければならないレベルだ。このギャップは2014年の雨傘運動のときも感じたことがある。ニュースはデモが起こっている場所しか撮さないので仕方がないのだが。。

というわけでまず香港のほとんど地域ではデモが起こっているのを忘れるぐらい普通であることを伝えておきたい。今後どうなるかはわからないが、本日時点では予定していた香港渡航を取りやめたりする必要はまったくない。

ちなみに「逃亡犯条例」の改正の内容は香港が犯罪人引き渡し協定を締結していない国・地域の要請に基づいて、容疑者引き渡しを可能とするものだ。現在香港は米国など20カ国と犯罪人引き渡し協定を結んでいるが、中国本土やマカオ、台湾とは結んでいない。香港は中国の特別行政区なので他国と締結するような協定を中国と結んでいないがそれ故に中国で犯罪を犯した人が香港に逃げ込むというケースも存在していたようだ。中国側としては他国感を出さずにこの問題を解決したかったという善意の解釈もできないことはない。

しかし中国の影響力強化に危機感を覚える香港人のグループは「そんなことになったら中国政府に都合に悪い人たちがなんらかの罪をでっち上げられて、引き渡され不公正に裁かれてしまう!」と反対を唱えてる、というのがざっくりとした構図だ。ちなみに個人的にはデモ側に賛同している。自分にやましいことがあるわけではないがそんな引き渡しのルールはない方が良い。

日本や米国をはじめ我々に身近な国の多くが民主主義を正義だと考えているからか一連の報道もデモ隊に同情的である。12日夜はデモ隊が暴れたのでそれを抑えにかかった警察との間で衝突が起こり、数十人のケガ人が出た。ケガをしたデモ隊の人も確かに気の毒だ。しかし実は警官にもケガ人が出ている。余談だが、僕は警官の方がもっと気の毒に思える。市民を守るためにに警官になったのに、相手が実力行使してくるから仕方なく手を出さざるを得ない。本当は自分もデモ隊と同じ考えなのに仕事だからやらなければならないし、それなのに非番のときに家族や友人から罵られることがあるかもしれない。

一方そんな価値観や見方を誰もが持っているわけではない。昨日大陸に住む中国人に香港のデモの様子を伝えたところ、その反応は冷ややかだった。当たり前と言えば当たり前だが、香港でのデモは中国国内では報道されないので僕が言うまで相手はそのことを知らなかった。しかし内容を伝えたあとも”ふーん”と言った感じ。そのときにはっと気がついたのは中国本土に住むほとんどの人は根本的に香港人が「一国二制度」のもと、自分たちよりも多くの自由や自治を享受しているのを決して快くは思ってないのだな、ということ。嫉妬心も手伝って”香港人もさっさと私たちと同じ立場になれば良いのに!”と心の中で思っている人がおそらく億人単位でいるのだろうということだ。

もっとひどい状況下にある国民、例えば北朝鮮人とかシリア人とかイエメン人などにとってみれば反政府的な運動ができる、またはできる余裕があるということ自体が羨ましい状態だろう。「そんなに不満なら俺と代わってくれ!」と彼らに言われればデモ隊も黙るしかあるまい(「俺は老後のために喜んで2,000万円貯めるよ。代わって!」といわれたら日本人も黙る)

香港の人たちも「まだマシ」なのである。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須