イギリスのコンサルティング会社「Henley & Partners」による2023年の世界パスポートランキングが発表された。
パスポートランキングはビザなしで渡航が可能な国の数を集計してランキング形式で表したものである。パスポートさえあれば明日にでも行きたい国を訪問できるビザなし渡航。それを認めている相手国が多ければ多いほど強いパスポートとして上位にランキングされるのだ。
2023年の世界パスポートランキング
トップ3は以下の通りで、日本のパスポートは首位、「最強パスポート」にふさわしく193カ国への自由渡航が可能だ。
1位 日本、シンガポール :193カ国
2位 韓国 :192カ国
3位 ドイツ、スペイン:191カ国
ちなみにアメリカは187カ国で7位、中国は81カ国で64位である。
一方で日本人のパスポート保有率は年々下がってきており、2023年現在ではわずか17%だと言う。過去3年間のコロナ禍で海外渡航が制限されていたので、期限が切れたパスポートを更新していない人は多いだろう。それにしても申請すれば手に入る「最強パスポート」を5人に1人も持っていないというのは少々驚きではある。
日本勤務を断念する外国人
「日本行き、残念だけど断念したんですよ。。」
先日の香港人の友人の言葉だ。彼は欧州が本拠地の会社の香港支社で勤務しているが、最近思うところがあって日本支社への転属を考えていた。そのためのビザ取得や現地での生活についていろいろ相談に乗っていたのだ。
ちなみに同じグループ会社の海外の法人に異動して勤務する場合、日本では本社に籍を置いたまま海外子会社に出向する、いわゆる「駐在員」という形で勤務する形を採るのが大多数だ。大手企業などで駐在員として海外勤務になると、それまで本社で受け取っていた給与額はキープしたまま、プラスアルファで社宅や海外手当などが支給される。要するに海外勤務になると収入も手取りも増えることが多い。しかし欧米資本の中堅企業ではもし別の国のグループ会社に転勤する場合、そこでの給与や待遇については行き先の現地法人と改めての交渉するのが通常であるらしい。
「日本法人に移ると収入が30%ぐらい減るんですよ。。あちらでも頑張って検討してくれて社長の次ぐらいのポジションでオファーしてくれたんですけど、、」
彼は大学院卒、しかもマスターの学位を2つ保持している。詳しくは訊いていないが40代半ばの会社員でそのスペックであれば少なくとも年収HKD1,000,000ぐらいはあるはずだ。2023年3月上旬現在の為替レートHKD1=JPY17.5、単純計算で1,750万円となる。30%低い金額でも1,200万円。中堅企業の日本法人が頑張って社内ナンバー2の給与としてオファーする金額としては当たらずとも遠からずといったところだろう。
財務系の仕事を担当している彼はコロナ中にリモートワークを余儀なくされている過程でどこにいても業務をこなせるということを認識した。加えて2019年頃から中国政府が香港に対する関与を強めていることあり、別の国に居住権を確保しておく必要性も感じて日本勤務へのアイデアを温めていたらしい。しかしこれだけの大幅な減俸を受け入れてでも、というわけにはゆかないということだろう。
活かしきれない今の実力と将来の魅力
2023年3月上旬現在、ドル円の為替レートは2ヶ月ぶりに138円台をつけた。2022年10月に150円という32年ぶりの円安水準を記録してからは、米国のインフレ率の低下と利上げペースの減速、日銀の長期金利許容変動幅拡大による実質的な利上げなどで一時125円台まで円高方向に動いていたが再び円安に触れ140円台を目の前にしているということだ。10年ぶりに交代する日銀新総裁の植田氏が金融緩和の持続を発言していることも影響しているだろう。
最強バスポートの保有率が2割を切っているのも円安で海外旅行が非常に高価なものになっているのと無縁ではあるまい。またかつてはアジアの人にとって憧れだった日本も勤務先として魅力を失っていることもまた頭に入れておいたほうが良い事実だろう。