メールマガジン【国境なき投資戦略】をはじめて発行したのは2011年のことだった。そのとき、一番最初の問題提起として多額に上る日本国政府の債務総額は「約1,000兆円」で日本のGDP(国内総生産)である「約500兆円」の2倍の規模に達するという言い回しを用いてその深刻さを表現した。

また、その債務を人口で割って国民一人当たりの金額を算出すると「800万円」になるという表現も用いた。あれから10年。。

2022年8月10日の日本経済新聞の記事によれば国債と借入金、政府短期証券を合計した国の債務は1,255兆円を超えたと報道している。日本の人口は2021年の人口統計で約1億2,550万人である。奇しくも現在国の借金を国民一人当たりに直すとちょうど1,000万円という計算になる。この10年間で国の債務は約25%増加したことになる。順調、いや着実に増えている。

2021年度の日本のGDPは約540兆円。ということは今日本の債務総額はGDPの2.3倍にまで膨れていることになる。借金が増えていることはもちろん困るが、その伸びに対してGDPの伸びが鈍いのがもっと大きな問題だ。ちょうど500兆円ぐらいだった2011年年度から約8%増加、というところ。。これを単純に10年で割ると1年あたりの成長率は1%以下ということになる。

ちなみに2021年度の日本の経済成長率は1.657%。これはG20の国の中で最下位、世界191カ国の中で157位だ。平均で1%以下ということはだいたい170位である。日本は過去10年間に渡ってその位置を突っ走っていたことになる。経済成長率の世界各国の平均値が約3.6%なのでそれと比べても日本の成長率の低さは出色だ。

「収入が増えない」というのが日本人個人個人を見舞う宿痾のように言われ続けているが、そもそもこれで増えるはずがない。世界第三位の経済大国だから経済成長率は自ずと低くなる、、というのも違う。世界一の経済大国であるアメリカは2011年の名目GDPが約15.6兆ドル、2021年のそれは約23兆ドルなので10年で47以上の経済成長を記録している。

第二位の中国は2011年度のGDPが4.8兆ドル、2021年は11.4兆ドルなのでこちらは経済規模を10年で2.4倍にしている。中国は2010年にGDPで日本を抜いて世界第二の経済大国となったが、その後10年で日本の2.5倍の規模に達したことになる。上記は10年という尺でのみ考察したものだが、日本のGDPが500兆円を初めて超えたのはバブル崩壊から3年目の1992年のことだ。それ以来実に30年に渡り500兆円台で上下している。

まだトップ3にいるのはバブル当時三位以下の国をどれだけ引き離していたかという点である意味すごいことかもしれないが、30年の無成長状態に対する政府や日銀の政策運営の失敗は疑いがない。

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2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

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