2021年2月22日に厚生労働省が「人口動態統計速報(2020年12月分)」にて公表した2020年の出生数は87万2,683人(日本在住外国人含む)過去最低レベルだ。年初から新型コロナが流行した昨年、ある意味仕方がないところではある。
一方で死亡者数は138万4,544人と前年から9,373人少なかった。こうしてみると大騒ぎしている一方で日本での新型コロナの死者数はやはりかなり少なく、逆にマスク着用や手洗いなど個人の衛生管理が改善したために病気になる人が全体的に減ったのも確かなのではないだろうか。
2021年度日本の人口動静
出生数から死亡数を引いた自然増減数は-51万1861人、宇都宮市、松山市といった県庁所在地レベルの都市がこの一年でひとつ消滅したようなイメージになる。おそらくコロナで妊娠さえ控えるようになった2021年の出生数は70万人台に落ち込むのは避けられないと予想されている。出生数が100万人の大台をはじめて割り込んだのが2016年、今は特別な時期にあるとは言えそこからわずか5年でここまで来てしまった。
「日本の人口は?」と問われれば、ほとんどの人は1億2,000万人ぐらいと答えることだろう。2021年現在での日本の人口は約1億2,500万人だ。
日本の人口は1985年に1億2,000万人を超えて以来、これまでずっと1.2億人台で推移してきた。ちなみにピークは2008年の1億2,808万人。つまり約40年に渡り、日本の人口は「1億2,000万人ぐらい」でなだらかな頂上を描いてきた。
13年前に人口が減る状態に入ってからゆるやかながらも少しずつ減少ペースを速めており、5年後の2026年には長らく我々の概念にあった1.2億人を割り込み、2050年には1億人を下回るという政府のシミュレーション通りに推移しているようだ。同じシミュレーションではその頃の65歳以上の老年人口は全体の約4割を占めることになっている。現役世代がマンツーマンで引退世代を支えなければならない世の中は目前だ。
中国の少子高齢化
先日中国で1組の夫婦に3人目の子供の出産を認めるという方針が政府から示された。中国人以外の人が聞くと変な方針なのだが、中国はかつて1組の夫婦あたり子供は1人までしか出産を認められないといういわゆる「一人っ子政策」があった。これが1979年から37年間、2016年に夫婦あたり2人の子まで持つことを認めるに至るまで続いた。しかしこの新しい「二人っ子政策」は機能していないという話はよく耳に入っていた。
中国では子供の教育費が激しく高騰している。社会主義で子供たちが皆横並びで公立の学校に通っていた時代は20年以上も昔の話。現在は欧米や日本などと同様に良い教育環境を求めるならば高額の学費がかかる私立の学校に行かせることが普通であり、そこに入るためには厳しい入学基準を満たす必要があり、塾や習い事などで子供のスケジュールを埋め尽くすことになる。当然莫大な費用がかかる。それは一般家庭にとっては子供が一人だから可能だったことであり、ここに来て「2人、3人子供をもうけても良いよ」と言われても「いえ、ウチは結構です」ということになる。
不穏な将来への向き合い方の違い
いろいろと最近勢いの良さを見せている中国だが30年以上に渡って産児制限をおこなってきたツケは甚大であり、あと10年ほどで少子高齢化は日本と同様に将来に大きな影を落とす問題となるはずだ。将来の国力を左右する問題に同じように見舞われている日本と中国、しかしその現実への向き合い方で日本には頼りなさを禁じ得ない。。
良いか悪いかは別の話になるが、その点中国は暗雲が立ち込める未来を甘んじて受け入れないために打てるかぎりの手を次々と打っている気がする。経済が元気な今のうちに科学技術の発展に巨費を投じてアメリカと同様に月や火星に到達する一方で、軍備を増強し、国際社会への影響力を強め、みすみす衰退してゆくことに抗っている。
もちろん我々日本の領土を侵すことや、国際法を無視した行動や非人道的な行いは絶対に許してはならないし、徹底的に抵抗してゆかなければならない。しかし純粋に国の将来への向きあい方として祖国には少し寂しさも感じる今日この頃である。