自国開催の一次リーグでアイルランドやスコットランドなどの強豪を撃破して4戦全勝で初のベスト8を果たした日本代表の快進撃でおおいに盛り上がった2019年ラグビーワールドカップ。
11月2日の決勝戦は南アフリカVSイングランド。ワインを飲みながら香港・上環のバーの屋外スペースでテレビ観戦していると突然背後が騒がしくなった。程なく黒い服を着てマスクをつけた大勢のデモ参加者たちが我々の横を走りすぎていった。と、同時に目や鼻をツンとした刺激が襲う。近くで催涙弾が発射されたわけではないが彼らの服に付着したガス成分が拡散するのだろうか。
2019年11月6日の香港
数分気をとられて、再びモニターに目を戻すと大きく点差が開いていた。それまでイングランドの堅守に阻まれていた南アフリカがやっとトライを決めたのを見逃したのだ。。僕が予期せず香港デモ活動の現場に巻き込まれたのは2度目だ。他に自分の意思で見に行ったのが4度。香港のデモは22週連続、各地で無数に発生している。確かにデモ隊が火炎瓶を投げて、警察は催涙弾を撃ったりや放水している、警官が発砲する事態に至ったり、考えの違う民間人同士の争いで怪我人が出たりしているのもまた事実である。海外で報道されるニュース映像では香港全土が混乱の極みにあるように見える。しかし実際はどれも半径数百メートル内の限られた場所での出来事であり、日常生活の中でそれを目にするのは正直珍しいことである。
2019年ラグビーワールドチャンピオンの過去
話をラグビーに戻すと2019年のワールドカップを制したのは南アフリカ共和国、3度目の優勝はニュージーランド”オールブラックス”と並んで最多である。南アフリカの1度目の優勝は1995年の第三回大会。ちなみに南アフリカはこのとき初出場。第一回、第二回のワールドカップは当時の南アフリカの人種隔離政策「アパルトヘイト」への制裁が原因で参加していなかったからだ。
もう30年近く前のことになり、多くの人の記憶から消えかけているが南アフリカはかつて人種差別を法制化しており、そのせいでオリンピックをはじめとしたスポーツイベントからほぼ排除されていた。かつては国際大会に南アフリカは出場していないのが当たり前だったのである。当然同国では当時差別に不満を持つ有色人種の反発は大きく犠牲者もたくさん出る暴動や騒乱みたいなものが頻発していた。アパルトヘイトが終わったのが1991年、南アフリカは国際スポーツ大会に復帰するようになった。往時のひどいアパルトヘイト時代を思いおこしながら、いろんな人種で構成された南アフリカ代表の優勝メンバーを見るとどんなことも過去のことになるのだな、と改めて感じた。
デモの背後で進行している住宅政策
5ヶ月続いている香港のデモがいつ収束するかはまだわからないがいずれ過去のものとなるだろう。10月16日にはキャリーラム行政長官の施政方針演説があった。住宅・土地問題を中心に交通教育、中小企業支援などが盛り込まれた。
デモを行っている市民側が「ひとつも欠けてはならない」としている以下の5つの要求に対する回答がなかった。
(1)条例改正案の撤回[達成済み]
(2)デモの「暴動」認定の取り消し
(3)警察の暴力に関する独立調査委員会の設置
(4)拘束したデモ参加者の釈放
(5)普通選挙の実現
そのため全体的には落胆の雰囲気は否めないが実は重要な施策が盛り込まれていると個人的には思う。それは住宅供給についてである。
具体的には住宅について公営住宅と民間住宅の割合を60:40から70:30と公営の割合を増やし、50億香港ドル(約700億円)分の予算を確保し今後3年間で1万戸の公営住宅を供給、一定の基準を満たした人のみが応募・入居できる公営住宅である綠表置居計画(GSH)は2020年に1万2000戸分を供給することになる。また400万香港ドル~800万香港ドルのマンションを購入する場合、香港政府が出資する「香港按證保險(The HKMC Insurance)」を通じて最大で90%の住宅ローンをカバーする。
香港は住宅平均価格が1.4億円、平均賃貸価格が30万円(2019年CBREデータ)に達する世界で最も不動産価格の高い都市である。しかし平均所得は日本よりも低く、多くの人にとって持ち家は高値の花。とくにここ15年ほどの不動産価格の上昇は激しく自宅を保有している人とそうでない人との資産額の差は大きい。これが多くの香港人の不満の根底にあるのは間違いないはず。デモの影響で公営住宅の拡充やローンの利用が容易になることが推進されたのなら将来的に大きな成果であると思う。
住宅大量供給とノンバンク
いずれにしても今後数年にわたってかなりの数の不動産が供給され購入される。そのときに意外に増えるのがノンバンク(信貸会社)からの融資である。最大90%の住宅ローンを利用できるチャンスがあるとはいえ、そこには利用者に対する審査がある。条件によってはローン比率が80%になったり、70%になることも充分有り得るのだ。400万ドル〜800万香港ドルと言えば日本円で5,600万円から1億1,200万円、つまり自己資金で用意しなければならない頭金は10%で560万円から1,120万円。それが20%、30%に増えたとしたら、、現金ですぐに用意のできない方が普通である。
せっかく巡ってきた機会を逃さないために頭金の不足分を父母、親戚などから借金をするケースが増えるのが想定される。もちろんその金額を現金で持っていない場合は不動産を担保に入れて短期の融資をノンバンクから引くことになる。デモの映像に目を奪われている間に進行している経済の動きがある。それが過去のものとなったときに布石を打っておけるかどうかが投資家の腕の見せ所だ。
【不動産担保融資投資案件】
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