「ブローカー(Broker)」は日本語では仲立人という意味で独立の第三者としての立場にあって、他人間の商行為の仲介を業務とする。
代理店(Agent)のように一定の会社に従属するものでなく比較的自由に買い手のために商品を探したり売り手のために顧客を開拓したりする。真の意味におけるブローカーは単に取引の相手を紹介するだけでなく両者の取引契約を円満に実現させるよう誘導し、それを成立させるために努力し、その成約に当たっては証人となる義務をもち、法律によってはその仲立行為の成立に際して契約書に署名する必要がある。
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ブローカーの役割
ブローカーには仲介する商品の業種によって、
不動産ブローカー
証券ブローカー
為替ブローカー
保険ブローカー
船舶ブローカー
中古車ブローカー
などがある。一般にブローカーが必要とされるのは商品内容が複雑だったり、購入資金が比較的高額であったり、専門知識が必要な業種である。商品のスペックや特徴、なぜその商品が顧客に適しているかなどしっかり説明し、理解してもらったうえで購入してもらわなければならない。商品を供給する会社や商品内容そのものに詳しく、一方で集客もできる者がブローカー業務を円滑におこなうことができる。
ブローカーのイメージ
余談だが日本語でのブローカーという言葉はあまり良い印象を持たれないことが多い。不法就労を斡旋する闇取引とか、政治の汚職に関わっているとか、週刊誌やドラマなどで良からぬことを仲介する人のことをブローカーと呼ぶことも多いからかもしれない。実際はコンピュータの卓越した技術者を意味するハッカー(Hacker)やかつて強引なセールス手法が蔓延したせいで本来は生産者のリスクをヘッジする大切な役割を持った先物取引(Futures)が日本では良くないイメージで捉えられられているのとどこか似ている。
ブローカーの現実
海外でいうBrokerはそうしたイメージとは裏腹に国の規定に従いしばしばライセンスの取得・登録も求められるれっきとした専門職である。ライセンス登録をするということは当局の監督を受けることであり、不正を働けば処分を受けることになる。
香港で保険を取り扱うブローカーになる場合は保険仲介人の試験に合格したあとIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)を通じてInsurance Authority(IA:保険業監管局)に登録しなければならない。
日本では多くの証券会社のメインの仕事である株式の委託売買業務はそのまま日本語でもブローカー業務と呼ばれるが第一種金融取引業者の日本の証券会社はもちろん資本金5,000万円以上の株式会社であり、自己資本比率が120%以上あることをクリアして金融庁長官に登録しなければならない。
アメリカで不動産を取り扱う場合は各州で発行される不動産ブローカー(Real Estate Broker Person)と不動産セールスパーソン(Real Estate Sales Person)というライセンスがあり、それを取得しないと不動産を売買することができない、また不動産会社を開業するにはブローカー資格が必須であり、有資格のセールスパーソンも独自では不動産業者を営むことができず、必ずどこかのブローカーに所属する必要がある。
一方でシンガポールなどでは日本の宅建とか米国のような国家資格はなく自由に営業できるのでブローカーとして働くのに免許やライセンスが必要なのは国による。
ライセンスがなくとも資格者に仕事をつなぐことによりブローカー的に動いて収入を得ることも可能だ。これは海外ではイントロデューサーと呼ばれるが資金がなくとも始められる副業ビジネスとして取り組む人は少なくない。そこで実力をつけ、独り立ちできるようであれば将来正式なライセンスを取得してプロのブローカーとしてアップグレードを図るのだ。
PS:ちなみに不動産ブローカーの日本の映画での描かれ方とアメリカ映画での描かれ方の面白い対比がある。2013年の日本映画「凶悪」では”不動産ブローカー”役のリリー・フランキーが連続殺人事件の首謀者役を演じている。一方アカデミー作品賞も受賞した1999年の作品「アメリカン・ビューティー」では主演のケヴィン・スペーシーの妻とその浮気相手が不動産ブローカー、裕福な地元の名士的な雰囲気で描かれている。