日々変動している為替レートを基に通貨を売買して、その変動の差益を得る「FX(外国為替証拠金取引)」

FX取引はFXブローカーと呼ばれる証券会社を通じて行われる。国際的な為替取引の場としてインターバンク市場と呼ばれるマーケットが存在するが、一般人の我々はそこに入って通貨の取引をすることはできない。これは株式を買うときに我々が直接東京証券取引所などで取引することができず、取引所に入る資格を持っている証券会社を通じて買わなければならないという構造と同じだ。

FXブローカー

株式取引の証券会社と同じく、FXブローカーの基本的な収入源は取引手数料である。FXの取引手数料はスプレッドという形で徴収されている。

カバー取引

例えば1ドル=150円のとき、ドルの買値を150.002円と設定して、ドルを買いたい顧客から1ドルにつき0.2銭の差額をもらう。この0.2銭がスプレッドだ。このスプレッドは取引市場であるインターバンクにも支払わなければならない。インターバンクのスプレッドが150.001円であれば0.1銭を支払うことになるので証券会社に残る手数料は1ドルにつき0.1銭となる。為替取引はレバレッジをかけて数万単位という取引規模で行うのが普通なので、インターバンクに注文をつなぐことで手数料はFXブローカーは一度の取引で数十ドル単位の手数料を得られるのだ。このように顧客から受けた注文をインターバンクにつなぐことをカバー取引と言う。

マリー取引

ところで、仮に証券会社が2人の顧客からUSD10,000の買い注文とUSD10,000の売り注文を同時に受けたとする。その場合この取引をインターバンクに繋がずに相殺してしまえば顧客からは手数料を受け取れるがインターバンクへの手数料は支払わなくて良くなる。つまり2人分の満額の手数料を手にすることができる。これをマリー取引と言う。

このマリー取引、2004年以前は証券取引法第129条や金融先物取引法第73条等により禁止されていたが、2004年以降は「事前に顧客に告知しており、同意を得ていればマリー取引を執行しても良い」ということになっている。

マリー注文を行えば顧客への手数料を安くできるというメリットがある。というより、現実的にはそれによりすでに業界の手数料の値下げ競争はぎりぎりのところまで来ている。さて買いポジションと売りポジションの量がまったく同じであれば証券会社はすべての注文をマリー注文で捌けば良いということになるが、実際はどちらかが多くなり、買いポジションか売りポジションが余ってしまうことになる。

FXブローカーとノミ行為の真実

すると証券会社には2つの選択肢ができる。

1.その余ったポジションをインターバンクにつないでカバー注文を入れること。

2.その注文を自社で引き受けること、つまり自社で逆の注文を出してマリー注文にすること

1の場合はインターバンクに支払う手数料が発生するが真っ当なやり方と言えるだろう。

2の場合はインターバンクへの手数料を支払う必要はなくなるが、顧客からの注文を自社のリスクで引き受けてしまう、いわゆるノミ行為のような形になる。つまり顧客が損をすれば証券会社が儲かり、逆の場合は証券会社が損をするという図式になる。

このことをもって証券会社と顧客は利益相反の関係になりやすく、FXブローカーが自分の利益を守るためにチャートを操作したり、故意に約定価格をずらしたり(スリッページ)という不正が起こりやすいということをまことしやかに語られている。ところが実際は証券会社にはディーラーという相場の専門家がいて、常に会社としての相場に対する判断を下している。

その判断の中で余ったポジションがディーラーの相場観と一致する方向であればリスクが高いのでインターバンクへつなぐという判断になるだろうし、もしそれがディーラーの相場観と逆のものであれば反対のポジションを立てて、ノミ行為と同様の形を採ることもあるだろう。不正をしている業者がゼロだとは言わないが競争の激しい業界でそんなことを続けるのは難しいはずだ。

実際にはほとんどの会社が真面目にビジネスをしているのである。

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