1ビットコインがUSD70,000(日本円では1000万円以上)を超える時代になった。

2008年10月にサトシナカモトが論文「ビットコイン: P2P電子通貨システム」を発表。2009年1月にはじめて送金されたビットコインはBTC1=約0.07円。2010年10月にはBTC10,000とピザ2枚のはじめての商取引。2012年1月にはじめての半減期があり、マイニング報酬はBTC50/ブロックからBTC25/ブロックに半減。その時の価格はBTC1=USD12.35。

ビットコイン(BTC)の現在地

2013年イーサリアムの誕生。2015年、シカゴマーカンタイル取引所でビットコイン先物の取引開始。2016年、2回めの半減期マイニング報酬はBTC25/ブロックからBTC12.5/ブロックに半減。その時の価格はBTC1=USD650.63。

2017年12月にビットコインをはじめとする暗号資産がこぞって急騰、いわゆるビットコインバブルという出来事で「億り人」という言葉も登場し、当時仮想通貨と呼ばれていた暗号資産が広く一般に周知された。このときビットコインの最高値はBTC1=USD20,000を超えた。

2018年、BCT1=USD3,000台まで下落。2019年、USD14,000台まで持ち直す。2020年3月のコロナショックでUSD4,000台に下落。2020年5月、3回めの半減期マイニング報酬はBTC12.5/ブロックからBTC6.25/ブロックに半減。

コロナ禍で各国が景気刺激策としておこなった金融緩和政策で暗号資産も上昇、2021年11月頃にはBTC1=USD69,000近くまで上昇。利上げ開始と金融緩和縮小により2022年末にはUSD15,000台まで下落。2024年1月、SECがビットコイン現物ETFを承認。2024年4月、4回めの半減期マイニング報酬はBTC6.25/ブロックからBTC3.125/ブロックに半減。

暗号資産市場の成長

リーマンショックが発生したのは2008年9月なのでその直後にビットコインのコンセプトが生まれたことになる。2024年6月現在、暗号資産市場全体の時価総額は2.5兆ドル。そのうちビットコインの時価総額は半分を占めている。世界経済を揺るがし大手金融機関が次々に破綻したリーマンショックによる銀行の合計損失額は約1.3兆ドルなので、当時影も形もなかった暗号資産は16年でその倍ぐらいの市場規模に育ったことになる。

一方で2.5兆ドルは2024年6月現在の為替レートで換算すると約400兆円。日本のGDPが約500兆円なので、世界の暗号通貨の総価値はまだ日本人が1年間に創造する付加価値の合計額の8割程度に過ぎない。ちなみに株式市場に目を転じると世界最大のニューヨーク証券取引所の時価総額は約25兆ドルなので暗号資産市場の10倍。東京証券取引所や上海証券取引所、ユーロネクストなど個別の証券取引所でも時価総額は5〜6兆ドルとそれぞれ暗号資産の2倍以上、世界で10番目ぐらいの規模のカナダ・トロント証券取引所がだいたいそれと同じぐらいの規模である。

”その程度の規模か”と感じるか、わずか10数年でそこまで拡大してきたことも含め”伸びしろしかない!”と感じるかは人それぞれだろう。

暗号資産の稼ぎ方2024

いずれにしてもこれだけ取引市場が活性化しているのは、そこで「稼げる」と大勢の参加者が信じているということだろう。実際、暗号資産取引には実にいろいろな「稼ぎ方」がある。

現物取引や信用取引を用いていわゆる「買い」と「売り」で売買益を得てゆく方法はもちろんのこと、先物取引やオプション取引などデリバティブもある。今年になってETFも承認されたので小口の投資家がファンドに投資する形で市場参加することも可能になった。この辺りは従来の株式取引と同様の方法で利益を狙うことができるということだ。

一方で株式取引にはない暗号資産ならではのユニークな「稼ぎ方」もある。それがマイニング、ステーキング、レンディングなどである。マイニングは暗号資産の取引のデータを検証・承認したのち、データをブロックチェーンのブロックに保存する作業のことである。その一連の作業を一番早く完了した者に報酬として暗号資産が支払われる。これを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」と言う。これがマイニングによる「稼ぎ方」だ。

暗号資産のマイニング

マイニングは自分で演算器を所有して参入することもできるが、今やそれをおこなうには膨大な費用がかかるので一般的にはマイニングプールやクラウドマイニングという演算器を所有しているグループに投資して報酬の一部を受け取る方法で取り組む。一方でマイニングは環境に大きな負荷をかけるというデメリットがある。取引データの検証には高性能な演算機器が必要でそれを使って膨大な量の計算をこなす必要がある。そしてその機器を動かすのに大量の電力を消費する。マイニングにはそうした機器を備えた多くの業者が参入して競争している状態にある。報酬を得られるのは競争に勝った者だけになるが、電力は競争に参加している全員がそれぞれ消費しているのでかなりの無駄遣いが出ていることになる。

このプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を採用している暗号資産の代表的なものにはビットコイン(BTC)やライトコイン(LTC)などがある。

暗号資産のステーキング

これを解決したブロックの生成プロセスに「プルーフ・オブ・ステーキング(PoS)」というがある。プルーフ・オブ・ステーキング(PoS)では先にブロック生成を担う業者を決めたうえ単独で任せることになっている。そのため取引のデータを格納するブロックを作る電力は最小限に抑えられるのである。

ブロック生成を担う業者は基本的に暗号資産の保有量や保有期間の多い者の中から選ばれることになっている。そのため、この業者に自分の持っている暗号資産を預け、その業者がブロック生成者に選ばれることにより、報酬のシェアを受け取るという「稼ぎ方」が成り立つ。これをステーキングという。イーサリアム(ETH)やテザー(USDT)、USDコイン(USDC)などが「プルーフ・オブ・ステーキング(PoS)」を採用している。

暗号資産のレンディング

レンディングというのは取引所に自分の保有する暗号資産を30日とか60日などの期間で預けて利息を得ることである。いわば銀行の定期預金みたいなものだ。取引所は預かった暗号資産を独自で運用して売買益を得たり、信用取引で空売りをしたい投資家により高い利息で貸し付けて利ざやを狙うことができる。

ステーキングやレンディングのサービスは大抵の暗号資産取引所に用意されており、簡単に利用できる。報酬も年利8%とか10%とか銀行の定期預金利率よりかなり良い。

暗号資産の裁定取引

また暗号資産は株式取引所のような中央の取引市場を持たずに小規模な取引所は大手の取引所の価格を参考に取引する形になっている。そのため相場が大きく動いたときなどに取引所ごとの価格にズレが出ることがある。ズレが発生したときに価格の高い取引所で売り注文を、価格の低い取引所で買い注文を同時に出すことによってリスクなしで利益が得られる裁定取引も成り立つ。少々特殊ではあるが、これも暗号資産の「稼ぎ方」の一つだと言える。
 

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