2009年に開発されたビットコイン(BTC)がはじめて使用されたのは翌2010年5月22日のこと。25ドルのピザ2枚とBTC10,000が交換された。BTC1=0.25セント(USD0.0025)というのがはじめてビットコインが法定通貨に換算された価格だ。
初期においてビットコインの人気は特に中国で高まった。資金の国外持ち出しに制限のある中国人の富裕層が自由に世界のどこへでも送金することのできるビットコインに目をつけたのだ。その人気を受けてビットコインははじめてBTC1=USD1,000を突破した。しかし事態を憂慮した中国政府は2013年12月に中国の金融機関がビットコインを取り扱うことを禁止する。
2014年の年が明けて程なくして当時世界一のビットコインの取引量を誇った取引所「マウントゴックス(Mt.Gox)」のシステムがハッキングに遭い、85万ビットコイン(当時の価値で約480億円)が盗まれる事件が発生。これはセキュリティの甘い取引所からビットコインが盗まれたということであり、ビットコインやブロックチェーンに問題があったわけではなかったが、当時の報道の誘導もあり世の中に「ビットコインは危険」という空気が醸成された。ビットコインの価格は低迷し、2016年頃までは数百ドルの水準で推移、2017年年初約4年ぶりにUSD1,000を突破、同年末にはUSD19,497の高値を付けることになる。
2017年後半から2018年初にかけての一般に「暗号通貨(仮想通貨)バブル」と呼ばれた時期だ。「億り人」「ICO」「アルトコイン」などという言葉が飛び交った頃である。2017年12月にはシカゴ・オプション取引所(CBOE)とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)がビットコインの先物取引を開始。世界の大手取引所がビットコインを金融商品と認めた瞬間だと言って差し支えはないだろう。
ところがこの先物取引で弱気な見通しが出たことが皮肉にもその後のビットコイン下落のきっかけにもなってしまう。時を同じくして中国人民銀行の副総裁が暗号通貨の取引所や個人、企業が提している暗号通貨関連サービスを禁止すべきと主張し、韓国でも暗号通貨取引の取り締まりが強化された。そして日本の仮想通貨取引所「コインチェック」からクラッキングにより580億円相当のNEMという仮想通貨が流出してしまう事件が起こった。
こうしたことの連鎖により暗号通貨の価格は大幅に下落し、ビットコインもそれまで最高値を付けてからちょうど一年後の2018年末にはBTC1=USD3,000台まで暴落した。そこから価格は持ち直し2019年6月に一旦BTC1=USD10,000を超えたものの、2020年3月の新型コロナ流行により世界の株価が軒並み暴落した時期にビットコインも直近の安値水準であるUSD4,000台を付けた。しかしその後はじわじわと上昇を続け2020年12月には過去最高値を抜いてBT1=USD20,000を突破。
2021年2月には米電気自動車メーカー大手「テスラ(Tesla)」が当時の価格で約15億ドル分のビットコインを購入、翌月には自社製品の購入の際ビットコイン決済への対応を開始。米決済サービス大手のペイパル(PayPal)は3月30日に消費者が何百万というオンライン事業者のサイトで仮想通貨を使って精算できる新機能「Checkout with Crypto」の立ち上げを発表。こうした世界的企業が実際に保有に乗り出したり、決済手段として採用することによりビットコインの価値は急騰。今月4月11日には取引時間中の最高値USD64,863を記録した。
つい数日前にアメリカ民主党政権が暗号通貨資産を含む金融資産に対するキャピタルゲイン課税の増税の計画に関する報道がなされ一時USD48,000台まで下落したが、現在は少し値を戻してUSD54,000前後で推移している。