自分が書いた【国境なき投資戦略】の25回のメール講座の中で年金の危機とか国民資産がターゲットにされていることとかいろいろな問題を取り上げて警鐘を鳴らしている。その中で人口減少と少子高齢化についても書いているが(メール講座第四回 人口減少。抗えない自然の摂理の中で我々は?その編集後記で「歴史は繰り返しまた人口増に転じると思っているので心配はしていない」と述べた。実はだんだんとそう思えなくなってきている。

政府の債務は数字上巨額だが、国民や政府や企業そして海外資産などで充分にカバーができるので国が揺らぐようなことはない。年金は若い世代にとって損な取引であることは間違いないが、先進国である日本で暮らせるメリットや最強パスポートなどを使えるコストとでも割り切ることはそれほど難しいことではないだろう。自分がまだ若ければ別途自分で老後資金を準備するなどの対策を採ることもできる。

だが、出生数が死亡者数を下回る人口減少はそれらとは比べ物にならないほど大きな問題ではないかと思う。2017年の人口減少は40万人。過去一年間に40万人の日本人が世界から消失した。今後も減り続ける見込みだ。2050年に日本の総人口は9,700万人になる。2008年のピークの人口から3,000万人の日本人が消えることになる。そしてそのときの日本人は40%が65歳以上の高齢者である。

日本人(大和民族)は縄文時代後期、平安後期から鎌倉時代、江戸中期と3度の人口減少期があったという。そしてその度に人口は再び増加した。江戸時代の人口は3,000万人で平均寿命は30代、それより前の時代の数値はずっと小さいに違いない。子供を生む年齢も10代が多かったから人口減少から増加に転ずるのはさして困難ではなかったのではなかったのでないだろうか。身も蓋もない言い方になるが生まれてくる人間と死んでゆく人間の入れ替わりが容易だったはずである。

そういう意味で平均寿命が80歳以上である今の世の中は「入れ替わり」が簡単な状態ではない。すなわち今回は再び日本人が増えることはないのではないか。。という予感がするのである。今や日本の20代の若者のうち成人まで交際相手のいない割合は7割とか8割という。ただでさえ急激に減っている若年層のこの状態。高齢化とともに重くのしかかって来る社会保障関連費用が現役世代の懐を削り、出産・子育てに割く余力を奪っているのであればこの先も解決困難で深刻な問題である。

少子化解決の先行きには暗い影しか感じることができない。だが、以上はあくまで「純血の日本人」についての傾向や見込み。日本という国が活力を維持しながら存続するために採れる対策は移民の受け入れ等々他にもある。人口の増えている東南アジアの人、元々人口が多く海外への移住にも抵抗の少ない中国人など、近隣の国から来た人たちと共存しながら日本で暮らす。そんな状況に向き合う未来はもうそこまで来ているのかもしれない。

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2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

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