以下は今から約30年前の1990年と最新2020年の各国GDP(国内総生産)のランキングである。1900年時点ではG7の国が綺麗に1〜7位を占めている、2020年はその間に巨大な人口を背景にして経済成長著しい中国とインドが割って入ってきている構図。
名目GDPランキング1990to2020
[1990年名目GDPランキング(単位:10億米ドル)]
1位 アメリカ:5,963.13
2位 日本:3,196.56
3位 ドイツ:1,598.64
4位 フランス:1,269.14
5位 イギリス:1,193.69
6位 イタリア:1,169.29
7位 カナダ:596.09
11位 中国 :396.59
12位 インド:326.61
[2020年名目GDPランキング(単位:10億米ドル)]
1位 アメリカ:20,893.75(対1990年比:350%)
2位 中国:14,866.74(対1990年比:3749%)
3位 日本:5,045.10(対1990年比:157%)
4位 ドイツ:3,843.34(対1990年比:240%)
5位 イギリス:2,709.68(対1990年比:227%)
6位 インド:2,660.24(対1990年比:815%)
7位 フランス:2,624.42(対1990年比:207%)
8位 イタリア:1,884.94(対1990年比:161%)
9位 カナダ:1,644.04(対1990年比:279%)
日本は当時第2位で現在第3位。順位だけ見るとそう変わらないが1990年の日本のGDPはトップのアメリカの半分以上、3位ドイツの約2倍の数字を持っていた。1990年といえばバブル崩壊直後だが、まだ一般にはその意識がなく4年続いた狂喜乱舞の好景気の余韻が色濃く残った頃。24時間戦えるジャパニーズ・ビジネスマンが世界を跋扈し、日本人はエコノミック・アニマルと揶揄された。
三菱地所がニューヨークのロックフェラーセンターを8億4,600万ドル、ソニーがコロンビア映画を48億ドルで買収、安田火災海上保険(現損保ジャパン日本興亜)がゴッホの「ひまわり」を53億円(当時の換算レート)で落札した。最近の中国人富裕層顔負けの爆買いを日本が演じていた当時、たしかに「アメリカに追いつけ、追い越せ」という雰囲気があった。
あれから30年。2020年時点では1位アメリカは日本の4倍、中国にもまもなく3倍の水をあけられようとしている。悲しいのは成長率の低さだ。新興の中国やインドは比べるべくもなく、他のG7の国の中でもここ30年間では最低である。逆にこれだけ成長率が低くてもまだドイツやイギリスなどより上にいるということで、当時の日本の勢いというか貯金の大きさが偲ばれるほどだ。
一人当たりのGDPランキング1990to2020
GDPを人口で割った一人あたりのGDPランキングではさらに深刻な状況が浮かび上がる。
[1988年一人当たりのGDPランキング(単位:米ドル)]
1位 スイス:32,818.82
2位 日本:25,575.10
3位 ルクセンブルク:24,976.67
[1990年一人当たりのGDPランキング(単位:米ドル)]
1位 スイス:39,888.21
2位 ルクセンブルク:33,201.39
3位 スウェーデン:30,253.86
8位 日本:25,895.96
10位 アメリカ:23,847.98
11位 フランス:22,432.06
14位 カナダ:21,572.14
15位 イギリス:20,854.87
16位 イタリア:20,624.44
18位 ドイツ:20,249.14
133位 インド:374.00
134位 中国:346.87
[2020年一人当たりのGDPランキング(単位:米ドル)]
1位 ルクセンブルク:116,921.11(対1990年比:352%)
2位 スイス:87,366.60(対1990年比:219%)
3位 アイルランド:85,205.50
5位 アメリカ:63,358.49(対1990年比:266%)
17位 ドイツ:46,215.60(対1990年比:228%)
20位 カナダ:43,294.80(対1990年比:201%)
22位 イギリス:40,394.13(対1990年比:194%)
23位 フランス:40,298.85(対1990年比:180%)
24位 日本 :40,088.60(対1990年比:155%)
29位 イタリア:31,604.43(対1990年比:153%%)
62位 中国:10,511.34(対1990年比:2810%)
148位 インド:1,929.68(対1990年比:5160%)
1988年、日本は名目GDPでも一人あたりのGDPでも世界2位だった。1990年時点でもG7の中ではトップの位置を誇っている。「全体のGDPではアメリカの後塵を拝していても一人あたりではこちらの方が上さ」とうそぶいていられたのだ。
それから30年。やはり成長率の低さが災いする。こちらは上位にとどまることが出来ず現在世界全体で24位。G7の中でも下から2番目という位置まで後退している。
アメリカの底力
他の国に目を転じてみるとなんだかんだ言ってもアメリカは強い。もちろん中国、インドの成長率には目をみはるものがあるがそれは30年前の経済力のパイが極めて小さかったこと、そして巨大な人口の作用が大きい。あの人数が生活してゆかなければならないのだから彼らからすれば名目GDPでは最低でも世界のトップクラスにいなければならない。逆に30年前の当時が辛すぎたといえる。また中国、インドが一人あたりのGDPでかつての日本のようにトップ10に入ることなどこの先もほぼ不可能だろう。
しかしアメリカは30年前すでに現在の日本のそれを上回るGDPを誇っていながら、そこから今日までに経済規模を3.5倍に拡大している。上位陣では中国、インドに次ぐ成長率であり、もちろんG7の中でも突出して高い。3億人を超える人口を擁していながら一人あたりのGDPでも世界で5番目。
人種差別、所得格差、次元違いの軍事力を背景にしたゴリ押しの末に大失敗等々いろいろ細かい問題はあるが、我々が生きている時代で国家として圧倒的な成績を残しているにがアメリカであるのは否めない。
とは言え、されど経済規模で世界3位。200近い国がある中で第3位。世界の多くの人の目には日本人は経済的にはお嬢様やボンボンのように恵まれたグループの人間に見えるに違いない。親の遺産を元手にこれから自分の力で人生を切り拓いてゆかなければならない嬢と坊。そしていろんな人がいろんなことを言って、時としてなかなか物事が進まない民主主義のコストを払いながら日本はある意味よく頑張っている。そんなことを考えながら、自分たちでリーダーを選ぶことのできない国の日本総領事館で在外選挙の一票を投じた。