「IFA(Independent Financial Advisor)」は香港政府から免許を受けた公認の投資顧問で日本語に訳すと独立系ファイナンシャル・アドバイザーとなる。
手持ちの資金や資産を有効に活用するためのアドバイス(投資助言)を提供したり、保険会社やファンド等金融機関の正規代理店となって顧客の契約を取り次いだり(仲介)することができる。ちなみに会社と顧客をつなぐ仲介者にはブローカー(Broker)とエージェント(Agent)がある。
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ブローカーとエージェントの違い
両者の違いを簡単に説明するとブローカーは特定の保険やファンドなどにとらわれず様々な会社の商品を扱うのに対しエージェントは特定の保険会社に所属してその会社の商品を販売する立場となる。つまりブローカーは顧客の側にいて適切な商品を選ぶというスタンスなのに対し、エージェントは自分の会社の商品を拡販する営業担当者的な性質がある。
香港の金融商品取扱ライセンスの試験
香港で個人の仲介者として資産運用についてのアドバイスを行うためにはまず資格試験に合格する必要がある。資格試験は証券に関しては証券関連の監督機関である、香港証券先物委員会(SFC=Securities & Futures Committee)が保険については、香港保険顧問協会(CIB=CIB=The Hong Kong Confederation of Insurance Brokers)香港保険業協会(PIBA=The Professional Insurance Brokers Association)がおこなっている。
つまり資格試験は保険の取り扱いライセンス(PIBA、CIB)と証券の取り扱いライセンス(SFC)に分かれており、それぞれ以下の試験がある。
【保険の取扱資格試験(Insurance Intermediaries Qualifying Examination)】
ペーパー1:保険の基本と実践(Principles and Practice of Insurance)
ペーパー2:損害保険(General Insurance)
ペーパー3:長期保険(Long Term Insurance)
ペーパー5:投資型長期保険(Investment-linked Long Term Insurance)
ペーパー6:旅行保険(Travel Insurance Agents Examination)
【証券の取扱資格試験(Licensing Examination for Securities and Futures Intermediaries)】
ペーパー1:証券と商品先物に関する基本的な規定(Fundamentals of Securities and Futures Regulation)
ペーパー2:証券に関する規定(Regulation of Securities)
ペーパー3:デリバティブに関する規定(Regulation of Derivatives)
ペーパー4:信用格付けサービスに関する規定(Regulation of Credit Rating Services)
ペーパー5:企業金融に関する規定(Regulation of Corporate Finance)
ペーパー6:資産管理に関する規定(Regulation of Asset Management)
ペーパー7:金融市場(Financial Markets)
ペーパー8:証券(Securities)
ペーパー9:証券先物(Derivatives)
ペーパー10:信用格付けサービス(Credit Rating Services)
ペーパー11:企業金融(Corporate Finance)
ペーパー12:資産管理(Asset Management)
多数の試験があるがすべてを受験する必要はなく、自分の取り扱う商品によってどの試験に合格すべきかが決まる。例えば一般的な生命保険を取り扱いたいのであれば保険の取扱資格試験の「ペーパー1:保険の基本と実践」と「ペーパー3:長期保険」に合格する必要があり、これに加えて投資性の高い生命保険の仲介をする場合は「ペーパー5:投資型長期保険」にパスする必要がある。証券を取り扱ったり、助言をする場合は証券の取扱資格試験のうち「ペーパー1:証券と商品先物に関する基本的な規定」、「ペーパー7:金融市場」と「ペーパー8:証券」を受験する。
しかし試験に合格するだけですぐにブローカーやエージェントとして活動できるわけではない。実際に業務をおこなうためには銀行・保険会社などの金融機関やIFAを通じて申請しなければならない。香港では個人の資格とは別に法人格での金融ライセンスがあり、それを保持している法人に所属して登録を行う必要があるのだ。すなわち保険会社を通じて資格者登録された仲介人はエージェント、IFAを通じて資格者登録をされた仲介人がブローカーである。
IFAの免許
では個人で資格を有するファイナンシャルアドバイザーを所属させて投資助言や仲介(ブローカー)業務をおこなわせることができる法人格のIFAはどのような規定の基に認可されているのだろうか?
IFAもやはり保険商品の取り扱いに関してはPIBAやCIBから、証券やファンドなどの金融商品の取り扱いに関してはSFCから事業者用の認可を受けて営業をおこなうことになる。保険取り扱いのライセンスはHKD100,000の資本と業界経験豊富な資格者を置くことが条件とされているが比較的ハードルは低いので多くの会社がこのライセンスを保有している。
香港で証券・ファンドや先物業務および外国為替証拠金取引に従事する場合は証券先物法の規定に従い、SFCから免許あるいは登録を受けることが義務付けられている。
免許の種類は以下の10種類である。
タイプ1:証券売買(Dealing in securities)
※単にブローカレージ業務に限らず、取得、売却、購入、引受業務等も含む
タイプ2:先物取引(Dealing in futures contracts)
タイプ3:外国為替証拠金取引(Leveraged foreign exchange trading)
タイプ4:投資助言 (Advising on securities)
※証券売買のアドバイスに限らずアナリシスレポートの発行等も含む
タイプ5:先物取引に関わる助言(Advising on futures contracts)
タイプ6:コーポレートファイナンスに関するアドバイス(Advising on corporate finance)
※事業再生やTOBアドバイス等も含まれる
タイプ7:自動取引サービスの提供(Providing automated trading services)
※電視設備の提供で店頭デリバティブ売買等でも使用される
タイプ8:証券担保融資・信用取引(Securities margin financing)
タイプ9:資産管理・資産運用(Asset management)
※不動産投資スキーム、証券・先物取引管理等を含み、自由裁量ベースによる取引も含まれる
タイプ10:格付業務(Providing credit rating services)
つまり先物取引を行う場合はタイプ2を取得、FXのブローカーを開業する場合はタイプ3を取得、という形で営業形態によって必要な免許を申請するのである。
一般的にIFAの場合、タイプ1、タイプ4、タイプ9の三種類の免許を保持しているところが充分な資金力と業務遂行能力を備えていると考えて良い。特定の保険会社に所属せず自由な立場で資産運用のアドバイスを行い(タイプ4)、ファンドなど保険以外の様々な金融商品の正規代理店となって契約の取り次ぎ(タイプ1)、商品によっては一任勘定で顧客に代わって運用の代行可能(タイプ9)であれば他社に委託することなくすべて自社でサービスを提供することができるからだ。
またそれぞれのライセンス取得条件には執行責任者の数、最低払込株主資本や最低流動資本の金額が規定されている。複数のライセンスを取得するためにはその中でもっとも高い基準に合わせれば良いが、最も要求の高いタイプ1を取得するためにはHKD10,000,000(約1億3,500万円※)の最低払込資本とHKD3,000,000(約4,050万円※)の最低流動資本が必要となるので、上記のような充分な能力を備えたIFAとなるためにはそれなりの資力が必要となるのである。
※HKD1=JPY13.5(2019年8月)