世界の企業の時価総額ランキングを1989年(平成元年)と2018年(平成30年)で比較した興味深い記事があった。
https://diamond.jp/articles/-/177641?page=2
平成元年のランキングでは50位のうち32社を日本の企業が占めている。平成30年のランキングには35位にトヨタ自動車が1社入っているのみである。平成元年はバブル絶頂期で日本の会社の株は明らかに実力以上に買われすぎの状態だったのでこれをそのまま比較するのは疑問があるが、平成30年のランキングが表している実情はそう間違っていないはずだ。
平成が始まった頃世界を席巻していた日本ブランドの製品。今でも元気が良いのは確かに自動車ぐらいである。家電などは完全に中国や韓国等に取って代わられた。人件費も通貨も高くなった日本が完成品を作って輸出するということに向かなくなったのはとうの昔にわかっていた。これからは付加価値の高い情報や通信、ソフトウェアの分野が重要だということはインターネットやITテクノロジーが発達し始めた平成ひと桁の時代にすでに言われていた。
しかしわかっていながら伸び悩んだ。今その分野を席巻し、しのぎを削っているのはGAFA(GOOGLE,APPLE,FACEBOOK,AMAZON)を擁するアメリカとBATH(BAIDU,ALIBABA,TENCENT,HUAWEI)の中国。上記の記事の2018年の時価総額ランキングを見てもこの分野が重要だという当時の予測が正しかったのは疑いがない。当時すでに大資本だったNTTやNEC、優れたベンチャー企業であるソフトバンクや楽天などにもその一角に食い込むチャンスは充分にあったはずだ。
いや上記のIT企業のうちアップルとファーウェイ以外はすべて平成に入ってからの創業である。ということは昭和から平成に変わった当時すでにあったすべての会社のみならず当時生きていたすべての個人に新しい時代の経済の覇者になる機会があったといっても過言ではないかもしれない。経営の問題か、規制の問題か、言語の問題か、何が大きな原因かは知らない。いずれにしても日本からは現在世界経済を牽引している新産業分野で大きな影響力を持つ企業は現れず、良くても国内の大企業で収まっているぐらいだ。平成の間に克服できなかった問題は他にもある。少子高齢化と人口減少はその最たるものだろう。
子供の数が減ってゆき高齢者の割合が増える少子高齢化は将来の社会保障制度に暗い影を落とす深刻な問題である。さらに2015年からは死亡者数が出生数を上回る人口減少状態に入っている。現役世代の収入から拠出したお金を高齢者の生活の糧として支給する日本の公的年金制度にとって若年層が減少して、人口比で高齢者の割合が増えるというのは最悪のシナリオだ。支払う側の金額は増やされて、受け取る側の金額は減らされて、双方がどうにか我慢できるところでバランスを取りながらやってゆかなければならない過酷な状況に陥るのは目に見えている。何より若い人が少なく年寄りばかりの社会に明るいイメージを持つのは難しい。
また高齢者が増えるということは医療費や介護費も増大することでであり、年金とともに保険料だけでは賄いきれず国庫から拠出する部分も年々増えている。その原資はもちろん税金であり、増えてゆく国庫負担を賄うために税収を増やさなければならない。税収を増やすには経済成長によって全体の所得を増大させるかあるいは増税によって更に国民に負担を求めるというシナリオがある。前者であれば企業は増えた利益の中から、個人は増えた所得の中から所定のパーセンテージで納税するだけなので抵抗は少ないだろう。しかし先に述べたように今の日本は長いトレンドで経済成長は鈍化しているところである。
正直そうなる望みは薄い。さらなる我慢を強いられる後者のシナリオになる可能性は残念ながら高いと言わざるを得ない。一方で今年2019年から入管法を改正して外国人労働者の受け入れを拡大する方針が決まった。歯止めのかからない少子化の影響もあり日本の失業率は2%台と極めて低く、労働者は不足している。
入管法改正はまず直接的にその労働力不足解消のための施策だろう。後々そうして日本に来た外国人の家族の呼び寄せや移民の受け入れにつながるのか、そしてそれが将来の経済の活性化や社会保障問題の解決まで見据えたものかはまだわからない。有史以来ほぼ単一民族の国だった日本では移民受け入れに対して抵抗を感じる人も多いし、またすでに移民を受け入れて久しい欧米でそれが様々な問題を生んでいるが、その是非についてはここで論じるつもりはない。
とにかく海外から人を受け入れることが決まった。それは平成の最後になってようやく見られた人口問題に対する何らかのアクションらしきものである気はする。