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「ロビンフッド(Robinhood)」は取引手数料無料を謳ってアメリカで急速にシェアを伸ばしている米国の証券会社。スマホでゲーム感覚で取引できることも奏功し、コロナ禍で支給された給付金を元手にはじめての株式投資に挑戦するムーブメントを背景に2020年はユーザー数と取引高を爆発的に伸ばし、それが最近の株高の一因になっているとされ「ロビンフッド現象」とも言われている。

そんな造語が出現するほどその勢いは凄まじい。ちなみにロビンフッドを通じて取引をする個人投資家は「ロビンフッダー」と呼ばれている。


新進気鋭のオンライン証券会社「ロビンフッド(Robinhood)」

ロビンフッドはスタンフォード大学を卒業して、取引アルゴリズムと投資銀行ソフトウェアのスタートアップ会社に勤めていた2人の創業者により2013年に設立された。手数料無料で取引を行えるiOSアプリを開発し、ベンチャーキャピタルから出資を受けて2015年にサービスを開始。2016年時点のユーザーは約100万人だったが、2018年に600万人、2019年末に1000万人を突破するや2020年には1300万人へと加速度をつけて拡大している。

2018年にはビットコインなど暗号通貨の取引も開始。未上場企業だがベンチャーキャピタル市場での評価は100億ドルを超えているという。上場前に企業価値が10億ドルに達する会社は幻の動物ほどに出会うことが難しいという意味で「ユニコーン企業」と呼ばれるが、その10個分の規模を持っていることになる。

ロビンフッダーと米国株式市場への影響

ロビンフッドの取引プラットフォームがモバイルアプリであり、SNSのようなインターフェイスを備えていてタイムラインなどに自分の投資活動の様子や投資に関する考え方などを簡単にアップすることができる楽しさとともに株式など金融商品の取引手数料が無料、1株未満で買えるという画期的なミニ株投資機能で小資金から投資できるという部分も受けて、そのユーザーの多くは1982〜1996年以前に生まれたミレニアル世代や1996年以降生まれのZ世代の投資初心者だという。

そんなロビンフッダーたちがアプリ上での交換情報をもとに特定の株式に殺到して株価が急騰することも起きているという。例えば、昨年6月にコロナの影響で経営破綻して紙くず同然のなったレンタカー大手のハーツ(Herz)の株価がロビンフッドのユーザーの買いで急騰し、新株発行も検討される(のちに断念)という異例の事態が発生したり、7月にはイーストマン・コダックの株価が医薬品原料の事業に進出するというニュースをもとにロビンフッダーに買われ2日間で20倍になるということもあった。こうしたことがときどき発生するようになっており、「ロビンフッドラリー」と呼ばれている。

ロビンフッド(Robinhood)の収益構造

やはり気になるのはこの会社がどうやって収益を得ているのかということだろう。証券会社、いわゆるブローカーは株式の取引を仲介することによる手数料収入が伝統的な収益源である。その手数料を無料にしてどうやって稼いでいるのか?

実はそんなに複雑なことではない。主な収益源は2つ。ひとつは信用取引による金利収入。信用取引では自己資金(証拠金)の数倍の資金で取引をしてより大きな損益を得ることができるがこれは証券会社の融資のようなものである。銀行から調達した資金をユーザーに貸して、調達金利よりも高い金利を徴収することにより利益がでる。

もうひとつは、手数料無料で多くのユーザーを集めて取引をしてもらうことによって集積された取引の情報(ビッグデータ)を別の会社に提供することでリベートを得るというものである。情報の提供先はHFT(High Frequency Trading=超高速取引)を駆使して稼いでいるヘッジファンド。

HFTでは100万分の1秒という超高速の回線を使って取引のできるシステムで、これを使える会社は実質的に一般の投資家より一瞬早くマーケット情報を入手できる。そこに一般投資家の売買情報があればいち早く入手した価格との利ざやを確実に取る(アービトラージ取引)ことができる。そうしてヘッジファンドがあげる膨大な利益の一部を「ペイメントオーダーフロー」というリベートとして受け取るのだ。

これは自社内でおこなえば違法となるのだが、別の会社を通していれば現時点ではなぜか合法だ。もちろん道義的には良いこととは思えないが。。

ロビンフッドの快進撃に追従したチャールズ・シュワブやTDアメリトレード、Eトレードなどの先行業者も手数料無料とHFTへの情報回送をはじめている。2020年12月にロビンフッドはSEC(米証券取引委員会)から6500万ドルという制裁金を課せられた。しかしそれは同社の収益源の大半がペイメントオーダーフローであったことの開示が充分ではなかったということに対してであり、HFTへの顧客情報の提供自体を咎められたわけではない。

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