各国の株価が急回復してきている。日建平均株価は2020年初23,319.76円で始まり、2月6日に終値ベースで今年の最高値である23,873.59円を付けた。新型コロナ流行による暴落で3月19日に16,552.83の底を付けてから昨日6月9日の終値は23,091.03円、年初の水準はもう目の前である。
米国のNYダウは年初の28,465.5から2月12日に29,551.42(史上最高値)、3月23日に今年の最安値である18,591.93を付けて6月9日は27,272.3、年初から-7%程度のところまで来ている。ナスダックに至っては2月19日に9,817.18を付けてから3月23日に6,860.67で底を打ってV字回復、6月9日の終値は9,953.75とすでに新たな史上最高値を更新して10,000の大台を目前にしている。
各国株価指数の急回復
新型コロナへの初期対応を巡ってアメリカや欧米諸国との関係悪化の傾向にある中国の上海指数は年初の3,066.34から3月23日に安値の2,660.17で折り返し、6月9日の終値は2956.11、年初との比較では-3.52%。中国が勝手に制定した国家安全法に揺れる香港ハンセン指数は年初28,249.37から3月23日の21,696.13を安値にして、6月9日の終値は25,057.22。
ドイツDAXは年初の13,323.71から2月19日には13,789まで上昇した、これはDAXの史上最高値でもある、その後3月18日に安値8,441.71まで暴落、6月9日終値は12,617.99。
新興国はインドSENSEXが年初41,340.27から1月14日に41,952.63の史上最高値を付けて3月23日には25,981.24まで40%近く急落し、6月9日の終値は33,956.69。ブラジル・ボベスパ指数は年初115,652から1月23日に史上最高値の119,528まで上昇、3月23日には63,570へとこちらは45%以上の暴落、6月9日は96,747で引けている。新興国はともかくアメリカや日本ドイツなどの先進国ではもうまもなくコロナ前の水準を回復し、今年度高値を更新してゆく勢いさえ感じる。
新型コロナウィルスによる実態経済の不調
最近になって新型コロナウィルスの影響で出されていた緊急事態宣言やロックダウンが次々と解除され、出勤や通学も始まり世の中が徐々に正常な状態を取り戻しつつある。しかしまだいろいろなところでの自粛や生活習慣の変化で実態経済の完全復活はまだまだ遠い感じだ。
企業の3月期(1〜3月)の決算はかなり厳しい状況で経常利益はTOPIX採用銘柄平均で前年同期比がほぼ半減。4月7日に始まった日本の緊急事態宣言の影響をもろに受ける6月期(4〜6月)の決算がさらに惨憺たるものになるのは明らか。倒産件数も2020年は7年ぶりに10,000件を超える予想がされている。ちなみに倒産件数の増加は必ずしも失業者数の増加と必ずしも比例しないが、売上・利益の大幅減少に起因するボーナスカットなどで就業者の所得が減るのは間違いないだろう。それはもちろん実体経済に悪影響を及ぼすはずなので景気はしばらく低迷すると考えざるを得ない。
株式市場が活気を取り戻している理由
それなのになぜ株式市場が活気を取り戻しているかと言うと、各国政府が巨額の資金供給をしているからであるということに他ならない。例えばアメリカの場合、まず3月中にFRBが1.5%の大幅な利下げをおこない、4月には無制限の量的緩和及び2兆3,000億ドルの資金供給策を決めた。この過程で普段は投資不適格とされるような債券まで買い入れ対象になった。こうして大量の債券が広く買われると債券の利回りが下がるので投資妙味が薄れて、資金が株式市場に流れ込むことになる。
日銀も金融緩和策として国債の無制限買い入れや直接株式市場の浮揚効果のあるETF買い入れを加速している。要するに金融市場は実体経済とかけ離れて独自の上昇を示しつつある。今回の新型コロナ流行の対策に投じられた資金はリーマンショック対策のそれ以上だと言う。世界規模で大変な惨禍を及ぼしている伝染病ではあるが予防法・治療法の確立でいずれは収束するものである。
それに対して各国政府、中央銀行の対策は適正規模であったのかどうか、少々疑問も禁じえない。「多すぎはしなかったか?」という意味で。もしそうであれば実体経済はともかく金融市場への投入は急務。バブルは将来に禍根を残すこともあるが早めに参入した者に大きな利益をもたらすのもまた事実だから。