「投資(Investment)」と「投機(Speculation)」
どちらも自分のお金を投じてより多くのお金(リターン)を狙う資産運用の一種である。一般にはどちらかというと投資の方が投機より良いイメージを持たれている。「投資家」という言葉には何か世の中の発展に寄与するような雰囲気が漂っているが、「投機筋」というとマネーの世界で暗躍している印象がないでもない。しかしもちろんどちらかが良くて、どちらかが悪いというものではない。
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投資と投機の違い
投資と投機の違いはある意味読んで字の通り、投資は資本にお金を投じるという意味で、投機は機会にお金を投じるという意味である。すなわち投資は事業を行ううえで必要なものを手に入れるためのお金を出して収益を待つこと、投機は上がりそうなときに買って、下がりそうなときに売って利益を狙うことに過ぎない。
投資とは?
設備や人材にお金を投じて生産性を向上させ、世の中により高い価値を提供することによってその対価としてリターンを得るのは投資という活動の最も伝統的な姿である。遠い昔、人々は鍬や鎌を買い畑を耕し農作物を作り、それを売って対価を得た。地主であれば更に小作人を雇って農業というビジネスを営んだであろう。
産業革命以降、高価で効率の良い機械が開発され、多くの労働者が必要な大工場などの出現で投資額も大きくなり、個人の資産では対応できない規模の投資が必要とされるようになった。そこで多くの人から投資を募って大きな資金で投資する方法が一般化した。株式会社である。投資家は出資した金額に応じては株式を受け取り、事業の収益から配当を受け取るようになった。
事業の収益率が良く、多くの配当が分配される株式は最初の出資額より高い金額を出してでも株主から譲ってもらいたいという人も現れるようになり、株式は相応の価格で取引されるようになった。そのうち株式を買いたい人とそれを売っても良いという株主をマッチングして仲介手数料を取るビジネスも出現、それが発展して証券取引所や証券会社になった。
株式会社を設立した当初に発行される株式は設備投資等事業を運営するための様々な費用に使う資金を集めるためのものだった。そこにはその会社の事業を応援したいとか、ビジネスが当たりそうだから配当がたくさんもらえるかもしれない、というような動機が生まれ、投資家は会社の資本に自分のお金を拠出したのである。
投機とは?
そころがその株式が取引市場に上場されると少し様相が変わってくる。一旦市場に流通した株式を買ってもその会社の資本は増えない、すでに会社に入っている株主資本の一部を所有する権利が別の人に譲渡されるだけである。(新規発行株の購入は別)配当や株主優待などが目的の人もいるだろうが市場参加者の大多数は売買益(キャピタルゲイン)を狙っているはずだ。ここまで来ると、最初の道具や機械を買って、人を雇って、、というところから随分離れてしまう。
ある株式が将来上がりそうだと考えたときに「買い」を入れて、下がりそうだと判断したら「売り」を入れる。冒頭の定義に従えばこれはもう投機と言っても良いが、株式取引でのこの当然の判断に悪いイメージを持つ人は多くなないはずだ。リターンを狙って物件を購入して賃貸収入を得る不動産投資に対して、値上がりをを期待して宅地造成前の土地を買っておく不動産投機。価格の変動しやすい農作物や鉱物資源から生産者が安定した売上を計上するために将来の引き渡し価格を決めておく商品先物とその価格変動を基に売買をする商品投機。
国際貿易においての大きな不確定要素である為替差損を被らないために為替予約によるリスクヘッジができる為替先物とその価格の変動を使って利益を得る為替投資。投機活動はいつも投資活動の延長線上にある。そしてそれに参加する人間の利益追求に対する動機のぶつかり合いが市場にさらなるエネルギーを与え、それを活かし人間の経済活動を支えているのである。