2011年にフィリピン・マクタン島で購入したコンドミニアム「8ニュータウンブルバード(BLVD)」完成予定は2014年末だったが建設工事は遅れた。

工期が日本のようにきっちりと守られないのは海外では、特にフィリピンのような新興国ではよくあることだ。まだいろいろなものが発展途上だから物件価格も安い代わりに人件費も安く作業のレベルもそれほど高くない。なのでこうした地域でオフ・ザ・プラン(プレビルド)の物件を買うときは購入者側である程度覚悟をしておく必要がある。

心の準備は出来ていても実際に完成が遅れるときちんとできあがるかどうか不安になったり、”あの資金を別のものに投じていれば”などと後悔の念にかられたりする。完成が遅れるということはその間の賃貸運用のリターンをまるまる失うことでもあり、実害も小さくない。だが新興国での不動産投資は国の未来に賭けるようなもの。もしその国が新興国から脱するような経済成長を遂げることができれば物件価格の上昇は数百%になることもある。仮にそうなるならば1年、2年のインカムロスは芥子粒だ。これは自分自身がここ10数年中国で目の当たりにしてきたことでもある。

ハイリスクハイリターン、完全余裕資金でおこなうタイプの投資だ。いずれにしても本来の完成予定時期から約1年が過ぎた2016年第1四半期に物件の完成と引き渡しの案内が来た。2016年6月にフィリピンに飛んだ。マクタン島はシャングリラリゾートやクリムゾンリゾート&スパ、プランテーションベイリゾート&スパ、アバカブティックリゾート、Jパークアイランド・リゾートなど名だたるホテルが軒を並べるリゾート地であるが塀で囲まれたホテルの周囲にはバラックのような家がひしめいている。現段階ではお世辞にも豊かな地域とは言いにくい。その中にあるマクタンニュータウンという区画。

今回投資した8ニュータウンブルバード、ワンパシフィックレジデンス、ワンマンチェスターというオフィスと住居が一体となったビルが集まっている。多くはまだ建設中だがすでに保険会社のマニュライフやフードコート、マクドナルド、セブンイレブンなどが入居している。

8ニュータウンブルバードはジムやサウナ、マッサージベッド、スイミングプールなどの共益スペースを備えた高級コンドミニアムという位置づけだ。修繕チェックのためはじめて自分が購入した物件に足を踏み入れる。一見きれいに仕上がっているが細部の施工はかなり粗く数十箇所の修繕要求を出した。

約4ヶ月後の2016年10月に修繕の完了の報せがあり、仲介会社にチェックを依頼し部屋の鍵を受領してもらう。これで引き渡しが完了。物件が自分のものになったら管理費(Management Fee)の支払い義務が発生する。管理費はPHP100/m2(約225円※)購入したのは39.6m2のスタジオ(ワンルーム)なので月々PHP3,960(約8,910円)ちなみに上海に保有している102m2の物件の管理費はRMB2/m2(約33円※)、RMB204(約3,366円)/月なので結構な割高感がある。※2017年7月時点の為替レート

今回現地に赴いて見聞したところまだ近隣のあちこちで建設が進んでおり、落ち着いているとはいえないがオフィスやショップは稼働していてフィリピン人の会社員やら学生風の人たちが行き来していた。現在物件のオーナーは外国人が多いみたいだが最終的には現地の人たちがそれを買ったり、住んだりすることが理想のゴールなので悪くない雰囲気ではある。しかし現時点では周囲に充分な雇用があるとは思えず、また家賃も現地の水準からするとかなり高いので長期で賃貸に出せる環境が整っているとは言えない。

当面はリゾートに近いという地の利や、プールやジムを備えているという特性を活かしてサービスアパートメント形式のホテルやAirbnbなど短期の運用で繋ぐというのは合理的なところかもしれない。Airbnbで検索してみると8ニュータウンはだいたいJPY5,000台からJPY7,000台/泊である。

平日週末や部屋のスペックによって違うだろうが仮にJPY6,000で各週末周辺で10日ぐらい上手く稼働させられればJPY60,000/月の収益を生む。収益の10%から15%の手数料で清掃や接客などの代行をおこなう業者も現地にあり、そういう会社に業務委託すれば自分であれこれ動かなくても運用は可能。

年間1〜2%の固定資産税、0.4%程度の火災保険料、管理費、外国人非居住者の所得税25%を加味すると収益の半分以上が諸費用に消えてゆくことになる。部屋を空のまま放置しておいても傷むばかりなので稼働させて維持費用を捻出しながら国の経済成長や物件価値上昇を待つ形になる。まあ、物件購入時にはAirbnbのように短期の賃貸で繋ぐ運用は一般的ではなく自分も想像もしていなかったので選択肢のある良い時代に完成したとは言えるのだが。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須