カンボジアはインドシナ半島に位置する国家。東にベトナム、西にタイ、北はラオスに接している、まさにインドシナの真ん中である。1,600万人(2017年時点)の人口は約9,000万人のベトナム、7,000万人のタイと比較すると国家としては小ぶりであるが国民の年齢の中央値は24歳とベトナムの30歳、タイの37歳と比較してかなり低い。合計特殊出生率も2.5と人口維持に最低限必要な2.08を大きく上回っており、今後数十年に渡って若々しい活力を保ってゆくことが予想されるカンボジアは生産年齢人口(15〜64歳の人口)の割合が増えて経済成長が見込める人口ボーナス期の真っ只中にある。
カンボジアの経済成長
その環境を背景にカンボジアは2000年以降毎年7〜10%程度の経済成長率を遂げており、まさに「今日より良い明日がある」という明るい雰囲気の中にある。特にアパレル産業と観光業の成長は著しく、低い労働コストと先進国向けの輸出関税免除を背景にユニクロ、H&M、GAP、リーバイス、アディダス、プーマなどの世界的アパレルブランドがカンボジアの縫製工場で生産をおこなっており、世界遺産のアンコールワットなどの観光インフラ整備やカジノ合法化などで2000年には年間50万人程度だったカンボジア観光客は2016年には500万人へと爆発的に増加している。
カンボジアのドル経済
ドル経済が浸透していること、そして海外への送金が原則自由なのもカンボジアの大きな特徴。カンボジアには現地通貨であるリエルがあるがその信用度が高くないため現金の80%以上は米ドル、預金の99%は外貨建てで占められており、日常の消費活動はほとんどが米ドル決済となっている。これは外国人投資家にとって他のアジア諸国にはないカンボジア不動産投資のメリットと言えるだろう。東南アジア各国で不動産投資をするときには日本円をタイバーツやフィリピン・ペソ、ベトナム・ドン等々に両替して投資をすることになる。完成した物件を賃貸に出した場合に受け取る家賃も基本的には現地通貨となるはずである。すると、いずれは必ず「現地通貨から日本円への両替」「現地から日本への送金」「現地通貨の価値が変動して目減りしないか」というような懸念に直面するはずである。もちろん米ドルであってもその心配がゼロになるというわけではないがやはり世界の基軸通貨そのままで回収できるというのは心理的負担を大きく軽減してくれる。
カンボジアの不動産事情
カンボジアでは2010年から非居住者の外国人や外国資本の法人が以下の条件の下でコンドミニアムを購入することが可能になっている。
・2階建て以上の物件
・区分所有が可能な物件
・外国人が所有できるのは総床面積の70%
・管理組合及び組合規定がある
土地を所有することはできないがコンドミニアムであれば外国人が所有権を持って自分の名義で登記をすることが可能。不動産の購入も家賃の受け取りもすべて米ドル建てで行なうことができるので他の東南アジアの国と比較して為替リスクが低い。また海外への送金も原則自由なので家賃収入や不動産を売却して得た資金を手元に戻すことが容易であるのは大きなメリットだ。カンボジア不動産投資の不安な点はまず借り入れ金利が高いことだろう。自国通貨と米ドルを併用しているカンボジアではより信用度の高い米ドルの需要が高いからか借入金利は10%を超える。カンボジアでローンを組むのは利息負担をかなり大きいと覚悟しなければならない。これをクリアする方法としては現金で買うか、あるいは日本政策金融公庫で融資(金利2.5%程度)を受けるという手もあるらしい。
次にきちんと賃貸収入が見込めるのかどうかというのも大きな課題だろう。近年の建設が進んでいるのは平均的なカンボジア人の収入に対して非常に高い物件である。少し前までは駐在員などの外国人向けの物件も不足していた状態だったので高級物件の賃貸需要は強かったようだ。だが限りのある外国人需要を満たしたあとのインカムゲインを狙うには現地の人の所得水準が追いついてくるのを待たなければならないことも考えられる。家賃値下げによる低利回りや空室状態を想定することも必要だろう。中国や他の東南アジア先進地域の不動産を初期段階で買った投資家が数百%のキャピタルゲインを得たということを心に刻みながら耐えることを念頭においてこの手の投資に取り組むことが重要だ。