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事実婚(内縁)、愛人関係。異性同士で法律による婚姻関係を結ばない形の家族のあり方だ。

事実婚(内縁)というのは独身の男女が婚姻届を出さずに同じ家に住み、生活を共にし、子供を持ったりして、通常の夫婦(法律婚)と同様の家族を形成することである。そのような形を採るのには様々な理由があるだろう。苗字を変えたくなかったり、周囲に結婚を知られたくなかったり、あるいはパートナーとは家族になりたいがその親戚とは一定の距離を保ちたいなど。

事実婚(内縁)、愛人関係という家族のかたち

愛人関係とは例えばどちらかがすでに結婚していたり、不定期に同居したりと、上記の事実婚にはあてはまらない家族と考えて良い。愛人と言えば、頭に浮かびやすいのはお金持ちの旺盛な男性が2号、3号という複数の女性とそれぞれ家を構えて本宅と行ったり来たりするというものだが実際にそういうパターンはごく一部だ。

私の知っている範囲でも本来の法律上の配偶者や子供たちとの関係が冷え切っているにもかかわらず、財産分与の問題で離婚に同意してもらえず、仕方なくパートナーと何十年も付き合っているというケースもあり、切実な事情の愛人関係も相当数あると考えられる。

事実婚(内縁)、愛人関係の不利な点

この事実婚や愛人関係は本人たちが元気で幸せに生きている間は、法律婚の家族とたいした違いはない。ところがパートナーが亡くなって相続が発生すると、法律婚と比べてかなり不利になる。要するに法律上の家族ではないため、相手が亡くなってもその預金や不動産他の資産を相続する権利がないのだ。どれだけ強い絆で結ばれた家族関係を作っていても、事実婚パートナーや愛人の資産はその血族であったり、法律上の配偶者やその子供が相続する権利を持ってしまう。当事者にとっては不本意極まりないことだろう。

事実婚(内縁)、愛人関係の相続対策

このようなことを未然に防ぐためには一定の準備をしておかなければならない。主には「遺言書」と「生命保険の加入」が具体的な手段となる。

「遺言書」は被相続人が生前に相続財産をどのように分けるかを書き記しておくもので、被相続人が亡くなったときにはその遺言書に従って財産分与がなされることになる。遺言書に事実婚パートナーや愛人に分与する旨を書いておけば良いのだ。ただ、いかに遺言書とは言え、すべてを自分が希望するように分けられてるわけではなく、法定相続人には「遺留分」という最低でもこれだけは相続できるという限度が規定されている。単純に「愛人に全財産を渡す」と遺言書に買いても必ずしもその通りにはならないことは憶えておかなければならない。

「生命保険の加入」はかなり有効な手段と言える。生命保険の場合、支払保険料の数倍の保険金が受取人に支払われることになるので、相続資産を本来より大きく殖やして渡すことができるという点で遺留分との軋轢も軽減されることになる。特に事実婚・内縁、愛人関係においてはこれ以上にない資産継承ツールである。

事実婚(内縁)、愛人関係に有効な生命保険

ただ日本の場合、これにも低くないハードルがある。日本の生命保険の場合、原則として受取人は「配偶者と2親等以内の血族のみ」というふうに規定されている。そのままではもちろん事実婚のパートナーは受取人には指定できない。

内縁の相手を生命保険の受取人にするには以下のことを証明する必要がある。

1.戸籍上の配偶者がいないこと
2.保険会社が認めた期間、同居していること
3.保険会社が認めた期間、生計を共にしていること

1.の場合は双方の戸籍謄本で証明することが可能だ、2.は住民票で証明できる、3は少し難しくなるが例えばどちらかが社会保険等の扶養になっていることの証明が可能であればクリアできるかもしれない。

ただ、これを持ってしても愛人に対しては困難と言える。

海外の生命保険の場合は保険会社によって細部は異なるものの一般的に受取人の範囲がかなり広く設定されており「婚約者(Fiancé, Fiancée)」や「友人(Friend)」という立場の人を受取人にすることが可能だ。つまり契約者が独身者の場合は自分を被保険者にした保険に加入して、パートナーを「婚約者(Fiancé, Fiancée)」として、既婚者の場合は「友人(Friend)」として受取人に設定することにより、自分の大切な人にスムーズに資産を渡してその後の彼・彼女の人生を護ることができるのだ。
 

 

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