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2020年に発表されたアメリカのCPI(消費者物価指数)は6.2%という30年ぶりの高水準だった。デフレからの脱却段階にいる日本人からはあまり現実味が感じられないところだが、アメリカを含む海外諸国ではかなり急速にインフレが進んできている。

インフレが進むということは現金価値が下がり、モノの価格が上がるということ。金が高止まりしているとか、原油価格は1年半前から何倍にも上昇しているとか、天然ガスが暴騰しているなど最近は商品先物相場の動向が大きなニュースになることが増えているのも、世界的なインフレ傾向と無縁ではない。

商品先物取引

「商品先物取引」は収穫や産出量、需給バランスなどによって価格が変動しやすい一定の商品(農産物や資源)を将来の決められた日(期日)に、取引の時点で決められた価格で売買することを約束する取引。

商品先物の利用者

例えば今から6ヶ月後の2022年5月に必要な原油先物を1バレル(158.9L)あたりUSD80で買えば、たとえ2022年5月時点の原油の現物価格がUSD100になっていようともUSD80で引き渡しを受けられる。1バレルにつきUSD20得することになる。逆にその時の価格がUSD60ドルになっていても約束通りUSD80で買わなければならない。その場合はUSD20損することになる。

そんな特徴を持つ先物だがいったい誰が何のために買うのか?例えばバス会社や運送会社など車を走らせて売上を上げる会社がある。もし原油価格が高騰するとバスやトラックを動かすための燃料のコストが増えて会社の利益を圧迫し、最悪の場合損失が出ることもある。だからと言ってすぐに運賃や運送料に転嫁するのは難しいサービス業にとって値上げは顧客の反感を買いやすいので簡単には行えないのだ。

そんなときに将来の原油、つまり先物を買っておく動機が生まれる6ヶ月先の原油価格はどうなっているかわからない。もしかしたら原油が下落してその分儲かるかもしれないが、逆に損するかもしれない。そんな状態バス会社や運送会社にとっ極力回避したいものなのだ。彼らは運輸事業によって利益を上げるのが目的であり、燃料の差益で儲けなくても良いし逆にそんなところで利益が圧迫されるのはとても困る先に述べたように売上の基となる運賃は簡単に上げられない。人件費や諸費用等々毎月の固定経費もある。不確定要素はなるべく排除して計算し計画を立てたいところ。だから先物を買って燃料のコストを固定したいという動機が生じるのだ。

逆もまた真なりで、原油の採掘会社にも同じことが言える。ちなみにWTI原油の先物価格は2021年11月現在USD80近辺を推移しているが、1年前の2020年11月頃はUSD40ぐらいだった一年でほぼ2倍の価格に上昇したことになる。しかし逆暴落することもあるわけで、企業としては相場の動き次第でボロ儲けしたり大損が出たりするより収益を想定できる環境にいたい。なので供給側にも将来の価格をある程度固定したいという欲求が生まれるのである。

こうした売り手(商品を持っている側)と買い手(商品を欲している側)集まって取引をする場が商品先物市場だ「いくらで売りたい」という売り手と「この価格なら買う」と買い手が多数集まりその妥協点が将来取引される商品の価格として形成される。

商品先物取引の調整者

ところで商品先物市場には実際に商品を供給する売り手と商品を必要とする買い手の他に別の参加者がいる。上記のように売り手と買い手の要求が噛み合った点が先物価格となるがこれは需要と供給の移り変わりにより日々変動する。価格が変動すれば先物価格が安いときに買って高いときに売る、あるいは高いときに売って安いときに買うことで利益を上げるチャンスが生まれる。(もちろん逆をやって損失が出ることもある)すると必ずしもその商品自体を必要としなくても先物を売買することによっ利ざやを取ろうとする人たちが現れる。

それが商品先物市場における第三の参加者である投資家(投機家)実はこの投資家の行動が商品先物市場にはとても重要だ。損益に敏感な投資家は経済状況とか需給の状態とか気象状況まで徹底的に調べて価格を予測し取引に参加してくるので、その集約がより正確な相場を生み出すことに作用するのだ。

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