株式や債券、為替を取引するときに世界の投資家やトレーダーが重視している指標に「ボラティリティ・インデックス(Volatility Index、VIX)」というものがある。ボラティリティ・インデックスは日本語で「恐怖指数」と呼ばれている。
恐怖指数(Volatility Index=VIX)とは
恐怖指数、、
インパクトの強い名前で覚えやすいが個人的にはいまいちわかりにくい気もする。そもそもボラティリティ(Volatility)は価格変動の度合いのことであり、ボラティリティが大きいというのは価格変動の度合いが大きい、逆にボラティリティが小さいというのはあまり価格変動がなく安定しているという意味だ。例えば株式は債券に比べて価格変動が激しい傾向にあるのでボラティリティが高いと言える。
要するに恐怖指数ことVIXは市場参加者が将来の市場動向に対して乱高下などを含む大きな変動があると感じているか、あまり動かないと考えているかを数値で表したものである。大きな変動には不安もあるが、大きく利益が取れるかもしれないという期待もある。その状態を一方的に「恐怖」とだけ言い切って良いのかどうか、、
屁理屈はこのくらいにして。
VIXはS&P500Indexという米国の株式指数のオプション価格から予想される短期のボラティリティを算出したものである。オプションはある銘柄を任意の権利行使価格で「買う権利(コールオプション)」と「売る権利(プットオプション)」を売り買いするもので市場のボラティリテが高まると基準価格の幅が広がり、そして広がり方のスピードにも変化が出てくる。その度合を計算して指数化したものである。つまりVIXはアメリカの株式市場がこの先上下に大きく動くか、そうでないかを観察できる指標だと言える。
恐怖指数(VIX)過去の推移
VIXは1993年よりシカゴ・オプション取引所(CBOE)が発表している。市場が安定しているときのVIX指数の数値は10〜20で推移しているとされ、30を超えるとボラティリティが高まる(と市場参加者が予測している)と言われている。1997年のアジア通貨危機ではVIXは38まで上昇し、米国株は6%下落した。2001年の同時多発テロの際には43になり米国株は12%下落。2008年のリーマンショックから世界同時株安のときにVIXは過去最高の89まで上昇している。その際米国株は最終的に高値から57%の下落を記録した。
VIXが高まると米国株ひいては世界の株式市場が暴落する傾向にあるということだ。株式をロング(買い)で保有している人には不安で仕方がないだろうがショート(売り)のタイミングを待っている人には大きなチャンス、あるいはこれから株式取引を始めるという人には絶好の買い場が訪れる機会だといえる。
市場の不安が高まるほどに上昇する銘柄や商品もあるので、その取引にVIXを利用するというのも有効だ。具体的には金(ゴールド)や日本円、スイスフランなどは世の中が不安に包まれているときに上昇しやすいのでVIXを観察しながらこうした資産を取引するというのは有効である。
これらは安全資産と呼ばれており世の中の不安が高まると株式などリスクの高い市場から資金が逃げ込む逃避先になっている。この動きはリスクオフ(リスクから離れる)という。VIXが高くなるとリスクオフで株が下がって金や日本円が上昇する傾向にあるということである。
恐怖指数(VIX)を取引するには
またVIXを基にして作られた、または連動した以下のような商品を取引する方法もある。
1.VIX先物
2.VIXオプション
3.VIX連動型ETF(上場投資信託)
4.VIX連動型ETN(指標連動証券)
先物は基本的には株式を取引するときと同じでVIXが今より高くなると考えれば買いを入れ、安くなると思えば売りを入れる。思惑が正しければ利益が出ることになる、但し先物取引は取引単位が大きいので取引するためにはそれなりの資金が必要だ。オプション取引の戦略はもう少し複雑であるが、例えばVIXが将来安くなると考えればコールオプションを売ることによりプレミアム収入を得る。思惑どおりに下落すればオプション価格も下がるのでそれを買い戻せば差額を利益として手元に残すことができる。
ETFやETNは上場商品なので株式のように取引できるうえに最低取引単位も大きくないので手頃だ。VIXが上昇すると連動して上昇するように設計されたETF(ブル型)や逆にVIX上昇で下落するように設計されたETF(ベア型)など様々な銘柄があるので内容を確認して投資することになる。一般的にブル型は長いトレンドでは下落する傾向にあり、ベア型は長期で上昇する傾向にあるのでそれぞれVIXが大きく動いたあとに順張りでポジションを持って長期保有するという戦略を採っている投資家が多いようだ。