暗号通貨の対する懸念のひとつに政府による規制がある。本来通貨は各国家やその連合体の中央銀行(日本であれば日銀、アメリカであればFRB、ユーロであればECB)が中央集権的に管理しているものである。だから中央銀行は金利の調整や金融の緩和・引き締めなどにより国内の景気循環をスムーズに調整することができる。
国の利害と暗号通貨(仮想通貨)
発行体が存在せず利用者同士の相互監視する技術でその信用性を担保するビットコインなど暗号通貨のコンセプトは素晴らしいが国の立場からすれば利用者にもっとも信用してもらいたいのは自国の通貨であるに違いない。
国内において国家権力は最強であり流通する通貨を発行できると同時に国内に法的な規制を設けることもできる。暗号通貨が国の利害(権力者の利害)と対立するようになったときにはなんらかの制限や禁止措置などが採られうることは想像しておきたい。
アイスランドでの暗号通貨の規制
アイスランドでは外貨取引法により暗号通貨の取引は禁止されている。一方で寒冷地のアイスランドでは多くの熱を放出するマイニングには適した地であり、実際に盛んにおこなわれている。そのマイニングによって得た暗号通貨は取引ができる。
2008年の世界金融危機のときに国家破綻の危機に瀕したアイスランドは自国で管理の出来ない暗号通貨の流通は規制したいが、大きな電力を消費してくれる海外のマイニング業者は誘致したいというところだろうか。
中国での暗号通貨の規制
中国では2013年に国内金融機関によるビットコインの売買を禁じたがその後取引は復活し世界最大の取引量を誇っていた。また膨大な電力を必要とするマイニングでも国内で安い電気代を背景に世界で中心的な役割を演じていた。しかし2017年9月にICOの禁止と暗号通貨と人民元の交換禁止を発表した。これに伴い中国国内の取引所は次々と閉鎖に追い込まれ実質的な取引はできなくなっている。(店頭での密かな取引は続いているといわれている)
2018年に入り、マイニングに対しても規制をおこない採掘業者に事業からの撤退を指示した。中国では資産の海外流出が問題化しておりフィアット(法定通貨)による送金は金融機関を通じて制限済みだがネットを介して世界各地に送金できる暗号通貨の送金を制限するのは難しい。国民が暗号通貨にアクセスできる元を絶ったというところだろう。
その他の国での暗号通貨の規制
その他、暗号通貨の使用を明確に禁止している国にはネパール、インドネシア、ボリビアなどがある。韓国も暗号通貨の取引が特に盛んな国のひとつである。2018年年初において韓国の通貨ウォンは主要な暗号通貨取引に使われる通貨として米ドルに次いで世界で第2位だった。その韓国でも2017年9月にICOが禁止されている。
また1月末からは実名制度が導入され、取引所からの出金は韓国国内のいくつかの銀行の自分名義の口座にしかできないようになっている。徐々に規制がかかってきているという感じだ。インドでは今年に入り財務大臣が暗号通貨を法的な通貨と認めない発言をしたり、実際に取引に制限する方向に動いているようだ。
同様に全面禁止ではないものの一部規制をかけている国には他にロシア、カナダ、マレーシア、タイ、ヨルダン、レバノン、コロンビアなどがある。