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「ステーブルコイン」は暗号資産の一種で、取引価格が安定することを目的に米ドルや金などの従来型の資産と連動するように設計されたものだ。

ステーブルコインの中で最もメジャーな暗号通貨は「テザー(Tether:USDT)」だろう。テザーは米ドルと連動するように設計された暗号資産でビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)に続いて長期に渡って暗号資産の時価総額第3位の座を保っている。このような性質から、価格変動の比較的激しい暗号資産内でビットコインなどを一旦利確したり、暴落を防いだりするときにはデザーをはじめとしたステーブルコインを使うのである。

ステーブルコインの種類

ステーブルコインをどのように従来型資産と連動するように設計されているのかという点で分類すると、以下の4種類に区分されろ。

1.法定通貨担保型

米ドルや日本円などの法定通貨を担保として運営されているステーブルコイン。原則として発行元は発行するステーブルコインに対して充分な法定通貨を保有しているとされている。

法定通貨担保型の暗号資産にはテザー(USDT)、USDコイン(USD Coin:USDC)、バイナンスコイン(Binance Coin:BUSD)、トゥルーUSD(TrueUSD:TUSD)などがある。

2.暗号資産担保型

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産により価値が裏付けられているステーブルコイン。担保となる暗号通貨はどうしてもボラティリティが高くなるので、一般的に担保となる暗号資産は発行するステーブルコインよりも多く保有されている必要がある。

暗号資産担保型の暗号資産にはダイ(DAI)、sUSDなどがある。

3.商品担保型

金などの商品(コモディティ)により価値が裏付けられているステーブルコイン。金は有史以来人類に資産として保有されてきた商品であり、何度となく発生した法定通貨の崩壊時も揺るがなかった最も安定した資産と言える。もちろん発行者は暗号資産を担保するのに充分な量の商品を保有している必要がある。

商品担保型の暗号資産にはテザーゴールド(Tether Gold:XAUT)、パクソスゴールド(Paxos Gold:PAXG)などがある。

4.アルゴリズム型(無担保型)

裏付けとなる資産を持たずに運営される無担保型のステーブルコインでシニョレッジ・シェア型とも呼ばれる。発行元は暗号資産の需要と供給の状況をアルゴリズムによって把握して、需要が多ければコインを売り、逆に供給過多であればコインを買い上げる操作により価値を一定に保つように設計されたステーブルコインである。

アルゴリズム型の暗号資産にはフラックス(FRAX)などがある。

しかしながら、現時点で実用的なステーブルコインの代表格は時価総額3位のテザーと6位のUSDコインと言って良いだろう。双方とも現実世界の基軸通貨である米ドルに連動していることから、暗号通貨が取引される仮想世界においての基軸通貨という位置づけであり、それぞれ「USD1=1USDT」、「USD1=1USDC」となっている。

USDTとUSDC

世界初のステーブルコインとして今現在最大の流通量を誇るUSDTを発行するテザー社(Tether Limited)は2014年に香港で設立された会社である。USDTは元々ビットコイン上のブロックチェーン上にある「オムニレイヤー(Omni Layer)」というプラットフォーム上で最初に運用されたが、今ではイーサリアムのブロックチェーンであるERC20、そしてEOS、Algoland、Tron等複数のブロックチェーンにも適応している。(一方でオムニレイヤーのサポートは2023年に終了)

USDCは2018年にアメリカの大手暗号資産取引所であるコインベース(Coinbase)とブロックチェーン技術を基盤に金融サービスを提供するサークル社(Circle)が共同設立したセンター(Centre)により発行が開始された。こちらはERC20のトークンとして発行されたが、やはりその後にSolana、Algoland、Stellarなどのブロックチェーンにも適応するようになった。

この複数のブロックチェーン上で取引が可能だというのは多くの暗号資産が一つのブロックチェーン上で運用されるのに対して、ステーブルコインの大きな特色と言えるだろう。その他の特色としてはUSDTもUSDCも会社が発行体となっているので、マイニングにより新たな通貨が発行され完全に自立したビットコインなどとは違い中央集権的である点だろう。これは通貨の発行に際してUSDが担保として求められる性質上仕方のないことであると捉えられるが、発行体の意思決定や経営状況によってその価値が左右されるというリスクもある。

ちなみに米国金融当局の管理下にあるUSDCは厳しい監査を受けているためUSDCの発行額と同額の米ドル資産(米国+現金)が担保があることが保証されている。一方でUSDTの発行元であるテザー社は香港法人であるため同様の監査を受けていない。

実際、USDTの発行額に対して米ドルの担保が不足しているというのは公然の事実としてあるようで、その巨大な時価総額に裏付けられた流動性が信用性の一部を支えているのは間違いないようだ。
 

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