「不動産の2020年問題」
東京オリンピックが開催される2020年に向けて関連施設やホテル、マンションの建設ラッシュで首都圏の不動産価格は上昇しているが、この国家的イベント終了後にバブルが弾け物件価格が急落するのではないかという観測である。観光客を含む日本への訪日外国人数は近年急速に増えており10年前には年間1,000万人に満たなかった訪日客が2018年年間で3,000万人を超える勢いで推移している。
このままゆくとオリンピックイヤーには未曾有の数の外国人が日本を訪れることになるのは明らかだ。その受け入れ体制の整備を含め建設が進んでいるのだが、そもそも日本はすでに人口減少状態にある。2020年の祭りが終わったあと、それら不動産物件は過剰となり値崩れを起こすのではないか、という懸念があるというのだ。
一方東京の不動産価格はオリンピック後も継続して上昇するという見方もある。確かに2015年に実施された国勢調査で日本の人口は1億2711万人と2010年に比べ947,000人(0.7%)減少した。そして現在も毎年死者数が出生数を上回る人口減少傾向にある。人口が減るから住宅需要も減るはず、だから不動産の価格は下落するはず。。と何故かそう単純にはゆかない。住宅の数は人口ではなく世帯の数に相関するからだ。
日本全体における2015年の世帯数は人口減少にも関わらず5,340万世帯で2010年の5,195万世帯から145万世帯(2.8%)増加しているのだ。理由はかつて大勢で世帯を形成していたのがだんだんバラけて少数あるいは単独で暮らすようになったこと。一つ屋根の下で親子三代が暮らした大家族から徐々に世代ごとに分かれて暮らす核家族化を経て、さらには配偶者と死別した高齢者や独身のまま生きてゆく人が増え世帯数が増加しているのである。この傾向が急速に進行しているため人口は減っているが住宅の需要は増えている。特に東京はこの世帯数の増え方が特に激しい。
政府機関や企業など多くのものが高度に集中しているこの地では地方からの流入が多く、東京都に限って言えば今だに人口も増えている。2018年の東京の人口は約1,380万人で日本全体の約11%が東京に住んでおり、現時点で1年あたり約10万人の人口流入が続いている。ちなみに人口が増えている都道府県は7個(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、福岡、沖縄)、他の40都道府県はすべて人口流出状態にある。一方人口も世帯も減ったのは2015年の国勢調査のデータで青森、秋田、和歌山、高知、鹿児島の5県のみである。
東京の人口も2020年頃には頭打ちになるが増え続ける世帯数がピークを迎えるのは2030年と予測されている。一人暮らしは増え続け2035年ごろには世帯数の半数が一人暮らしになるという。その状況で需要が高まるのは当然一人暮らし用のアパート・マンションということになる。逆にファミリー向けの広いマンションや戸建てには空室が目立って来ている。投資として不動産に取り組むなら社会構造の変化に沿った間取りの物件選びが必要になる。
いかに東京とは言え、2020年以降将来の人口が減ってゆくことを考えるとエリアの特徴を掴んで選別することも重要。世界の重要都市である東京の中心部の土地は価値が下がりにくいだろう。東京都心3区と呼ばれる千代田区、中央区、港区、それから渋谷区、新宿区の辺りだろうか。その中では渋谷区の人口は2015年にピークを迎えたが千代田区は2025年、中央区と新宿区は2030年、港区は2035年まで人口は増え続けるという。このエリアは家族で住むというよりは単身のビジネスマンなどが多いと考えられるので人口増と世帯数増がそれほど乖離しないはずだ。
また新たな在留資格の改定などで外国人の日本居住者が増えるとすればロケーションとしてわかりやすいこのエリアが住居として選ばれる可能性は高い。あとは同じ都心の区内でも意外に駅から遠かったり、買い物に不便だったりという地域もあるので最終的にはそのチェックを怠りなく、というところだろうか。