新型コロナウィルスによる肺炎が流行している。感染者と死亡者は日に日にその数を増しており、世の中に不安を与えている。
新型肺炎の発生源は中国湖北省の武漢。中国政府はすでに武漢とその周辺都市の公共交通機関を止めて事実上の封鎖に踏み切っているがその前に都市を出た感染者が国内や海外を移動して感染が広がっている。ヒトからヒトへの感染確認、毎日積み上がってゆく感染者数、治療にあたった医師が感染して死亡等々、センセーショナルな見出しのニュースや記事に目を奪われ恐怖が募ってゆく。。
2020年新型コロナウィルスによる肺炎の流行
多分、今目の前に「武漢から来ました」という人が現れたらほとんどの人は緊張してしまい、おそらく一緒にいることを避けたくなるだろう。何も問題がなくてもそういう目で見られてしまうのは気の毒だ。僕は2003年にやはりコロナウィルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したときに香港にいたからその風評被害はよくわかる。日本企業の駐在員だった当時、日本で行われる展示会にアジア各地のお客さんを連れて行ったことがあるがそのときに香港在住の我々は本社ビル及び展示会場への立ち入り禁止、出張中を通じて会社が用意した別の場所にある部屋に待機(隔離)させられた。結果から見ると香港でのSARSの感染者数は1,755人(死亡者数:299人)香港の人口は750万人、全体に対する感染者の割合は0.02%。10,000人のうち9,998人はまったく健康に問題がないにも関わらずそんな差別的な扱いを受けてしまう、、どうしようもないことではあるが。
原因不明の肺炎患者が武漢で最初に出たのは2019年12月8日だという。2020年1月29日現在の報道によると感染者数は世界全体で6,000人を超え、死亡者数は132人。
過去のコロナウィルスによる伝染病
17年前のSARSは2002年11月に発生し、翌2003年7月に終結宣言が出されるまでに感染者数は世界32カ国で8,098人、死者は774人だった。発生して間もないこともあり今回の新型肺炎がどのくらい危険なのかということが正確にはわかりにくいが1ヶ月半での感染者の増え方を見ると感染力はSARSより強いみたいだ。致死率はSARSよりも低いように見えるが、、これからもしばらく増え続けるはずであるところの感染者数と死亡者数のバランスが今後も同じかどうかをもう少し観察する必要がある。
2012年に中東で発生したこれもコロナウィルスが原因のMERS(中東呼吸器症候群)は世界27カ国で症例が報告され、感染者数は2,494人、死者は858人。こちらは感染力はSARSほどではないが致死率はSARSの3倍以上あった。
ちなみにインフルエンザは日本だけでも感染者数は年間千万人単位である。
伝染病の流行とマーケットの反応
こうした新型の伝染病が流行したときにマーケットがどういう反応をするか?新型肺炎のニュースが世界を駆け巡り始めた1月中旬ぐらいから1月末の現時点までに震源地である中国の上海指数は約5%、香港ハンセン指数は約8%、米国NYダウは約3%、日経平均は約5%下落している。SARSが発生した当時、香港ハンセン指数は2002年11月から2003年4月までに約15%下落した。その後原因のウィルスが特定されて急回復、10月頃には元の水準に戻っている。他の市場もだいたい同じ。原因が特定された4月ぐらいを底にして下落前の水準に戻っている。
今回の原因である新型コロナウィルスはすでに特定されているので今考えればSARSの原因の特定にはえらく時間がかかったものである。いずれにしても事態が落ち着くとともに元の水準に戻る可能性は高いのではないかと思う。一方で現在マスクメーカーの株価が急騰しているが現在フルで生産している商品が流行の収束とともにいずれダブついてこちらも元の水準に戻るのではないだろうか。
SARS時代のマーケットの動きで特筆すべきなのは香港の不動産価格である。SARSが発生した2003年、香港不動産の価値は地に落ちた。香港では大手の不動産会社が独自のインデックスを作っているが、Midland Property(美聯物業)が出しているAll Property Indexでは2003年4月に最低の29.73をつけている。それを大底にして現在は165。実に5.5倍になったということである。
https://en.midland.com.hk/property-price-chart/
武漢や中国の他の都市の不動産価格も影響を受けるだろうか?自分や家族が感染しないために細心の注意を払って予防に励むべきときではあるが、横目でこうしたことも意識しておくと良い。