日本居住者のHSBC香港口座開設。その起源は1998年4月の「外国為替及び外国貿易管理法(外為法)改正」にある。当時の橋本龍太郎内閣が推進していた金融の自由化を目指す政策、いわゆる「金融ビッグバン」の流れの中での出来事だった。
それまで日本人は企業の海外駐在員や留学生などが現地で給与の振込や生活費の入出金のために銀行口座を持つということはあっても、日本に住みながら海外の銀行や証券会社に口座を持つことはできなかったのだ。
日本人のHSBC香港口座開設の歴史
それからどのように日本居住者の間にHSBC香港の名前が広がっていったのかはわからないが、2002年に出版された橘玲氏の小説「マネー・ロンダリング」に日本から来た人の口座開設サポートを行なう主人公の姿が描かれている。ちょうど同じ頃、香港の出版社に勤めていた友人の上司が「大事なお金は香港で活かせ」という表題の本を上梓して、その本を頂いたことがある。アジアの金融センターである香港の銀行に口座を開設して、そこで投資運用を行なう方法が記されてあった。
おそらくその頃には香港を訪れてHSBC香港口座を持つ人が増えてきていたのだろう。当時私は日本企業に香港駐在員として勤務していて、この業界に関わっていたわけではないが、なんとなくその機運は感じられた。2008年に香港の金融免許を取得して開業した頃にはもうかなりそれは普及していたようだ。我々がHSBC香港のインターネットバンキングの使い方マニュアルを作ったのもその頃。
ピークは2010年〜2013年ぐらいではないかと思う。毎週何組もの口座開設サポートの依頼があり、ときどき10人、20人の団体をまとめてサポートするというということもあった。我々以外にも多くの同業者があって、一日で100人以上のお客さんのサポートをした、なんていう話も聞いた。実際HSBC香港口座を新規開設する日本人は間違いなく年間数千人単位にはなっていただろう。
HSBC香港口座の解約・閉鎖
あれから10年あまりの月日が経った。最近口座の閉鎖のために香港を訪れる人が増えている。
”最初に考えたほど海外口座を活用する機会がなかった、、”
”ある程度の年齢になったので身辺の整理をはじめている”
”最近の中国に危機感を持っている、、”
等々、そうする理由は人それぞれ、様々である。私が以前から提唱している、資産を世界の複数箇所に配置して局地的リスクを回避する「場所の分散」と資産を複数通貨に分けて保有し特定通貨の下落リスクを図る「通貨の分散」による資産防衛策の重要性はいささかの変化もない。またもちろん当時開設したHSBC香港口座を使い続けている人の方が大多数であるのも事実。ただ10年使ってみた上で「自分には必要ない」と結論づけるのもまた重要な判断であると思う。
「通貨の分散」効果を体感
ところで、そうして口座を閉鎖するという決断をして香港を訪れる人が必ずハッピーになる出来事がある。それは思っていたより多額の預金額の回収だ。10年前のドル円レートは約1ドル=100円、香港ドルと日本円のレートは約1香港ドル12.5円ぐらいだった。2023年9月現在のドル円レートは約1ドル=147円、香港ドルと日本円のレートは約1香港ドル19円。
つまり仮に当時、
100万円を香港ドルに替えて預金していたらHKD80,000なので、それを今日本円で回収すると152万円(+52万円)、
500万円を香港ドルに替えて預金していたらHKD400,000なので、それを今日本円で回収すると760万円(+260万円)、
1000万円を香港ドルに替えて預金していたらHKD800,000となり、それを今日本円で回収すると1520万円(+520万円)
となっている。
10年前のことなので口座開設時にいくら預金したかを忘れている人も少なくなく、結構嬉しいサプライズとなっているようだ。そしてこれこそが「通貨の分散」の効用なのである。
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