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2025年。昭和生まれの自分にとっては遠い未来のことだと思っていた。

当時抱いていた明るいイメージとしては今のこの頃にはタイムマシンとか宇宙旅行で時空を移動できるようになっているとか、少なくとも日常的に空を飛ぶ自家用車で移動している、とかだったろうか。暗いイメージとしては核戦争で荒廃して砂漠のようになった地球で生き残った人間が原始的な生活を送っているとか。実際は想像したほどまで科学技術は進んでおらず、文明の破滅も起こっていない。

日本の元号では令和7年、現在の天皇陛下の世になってもう7年も過ぎたことになる。どうでも良いが昭和元年は1926年なので、今年は昭和100年ということにもなる。

2025年問題

2025年の今年で団塊世代がすべて後期高齢者になることとそれに付随して発生する問題のことだ。団塊の世代とは1947年から1949年の戦後のベビーブームに生まれた人たちのことで、この三年間は毎年の出生数が260万人を超えていた。2023年の出生数は約72万人なので、現在の4倍弱の日本人が誕生していた凄まじい時期ということになる。日本における人口ボーナス期の経済発展を中心となって支えた世代だ。戦後の復興時代に生まれ、学齢期になると学校の建設ラッシュが発生し、中卒の人たちは集団就職、大学に行った人たちは学生運動を展開し、社会に出てからは「年功序列」「終身雇用」という日本独特の雇用慣習の中、モーレツ社員として働いた。政治家で言うと鳩山由紀夫・邦夫兄弟、作家なら村上春樹、芸能人ならビートたけし、武田鉄矢などが団塊の世代だ。

合計で800万人を超える人たちが75歳以上の後期高齢者になるというのが今年2025年。今年75歳以上の高齢者は2,180万人となり、65〜74歳の前期高齢者は1,497万人となる。日本国民の約3人に一人が65歳以上、約5人に一人が75歳以上という人口バランスになる。この高齢者人口の増加はほぼ予想通りだ。年齢ごとの人口は把握されているし、平和な世の中で死亡率にはあまりブレがないから数年先の人口バランスがどうなっているかは容易にわかる。一方で出生数の減少の予測はブレやすく、そしてはその減少は著しい。

5年に一度国勢調査をベースに人口を推計している国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は高位推計、中位推計、低位推計という3種類の人口予測を出している。

(出典)第一生命経済研究所:https://www.dlri.co.jp/report/macro/340186.html

ざっくりと高位推計は楽観的シナリオ、中位推計は妥当なシナリオ、低位推計は悲観的シナリオと捉えると良いはずだ。出生数が100万人を割ったのは2016年、2019年には90万人を割りこみ、2022年には80万人を下回った。そして2024年には70万人を割り込むことがほぼ確実視されている。これは2023年まで中位推計付近で推移していたものが一気に低位推計のデータに近づいたことを意味する。本来の中位推計で70万人を下回るのは2040年頃のはずだったので、この落ち込みは予想外と言えるだろう。しかもコロナパンデミックが明けた2023年に比べて、2024年はリバウンドがあるはずだと見込んでいたにも関わらず更に落ち込んだという点でショッキングである。予想外というまでではないが、想定された中でのかなり悪い方の水準で少子高齢化と人口減少が進んでいるということだ。

この2025年問題の何が具体的な「問題」となるのか?

それは大きく分けて以下の3点だ。

1.社会保障費の増大
2.医療・介護の体制維持が困難
3.後継者不足による中小企業の廃業激化

1.社会保障費の増大

人が年をとれば若い時より体の調子が悪くなるのは当然のこと。それで病院へ行ったり、介護を受けたりということが増加する。後期高齢者の場合は本人負担分は1割であり、9割を医療保険によって負担することになっている。つまり高齢者人口が増え続けることによって負担は増加の一途をたどる。一方でその保険料を負担する現役世代の人口は減少するのでその分一人当たりの負担額が重くなる。そのことにより所得を削られれば、子どもを持つ余裕もなくなるのでさらに少子化に拍車がかかるという悪循環に陥る。

2.医療・介護の体制維持が困難

医療や介護の利用が激増するということは金銭的な負担だけでなく、それに対応する病院や介護施設の需要が一気に増えるということだ。一方で医師、看護師や介護福祉士は国家資格が必要であり、その取得には時間とエネルギーを要する。しかもきつい、汚い、危険の3Kと呼ばれるような過酷な職場でもあり、とくに若年層の人材不足である今の日本においては忌避されがちな仕事。そうして十分な人材が確保できなければ、そのしわ寄せは今そこで働いている人に集中し、さらなる離職を招くという悪循環に陥る。

3.後継者不足による中小企業の廃業激化

若年層が少なく求人難の世の中では優良企業・大企業などから順番に雇用は埋まってゆき、中小企業では人材の確保が難しくなる。いきおい経営者は引退を伸ばして働ける限り働くのだが、それでも後期高齢者の年齢になると限界が近づく。そこで上手く会社を引き継ぐ若い後継者がいない場合はやむなく廃業となることも少なくない。廃業する中小企業が増えれば、雇用が失われ、地域経済にも良くない影響が及ぶことになる。

ふと、学校も公園も同じような年齢の少年少女で溢れていた子どもの頃、連日残業しながらもそこから会社の仲間と飲みに行く、奢ってくれるのは団塊世代の幹部たち、という風景が頭をよぎる。やはりタイムマシンに乗って、あの頃は想像しなかった世界に僕は来ていたのだ。

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