日本円の定期預金金利が0.1%程度という超低空飛行を続けている中、高金利を提供している国の銀行に預金してより高い利息収入を狙う人は私の周囲では多い。中国やカンボジア、モンゴルなどに日本円を持ち込み現地通貨や米ドルなどの外貨に替えて現地の銀行で定期預金を組む。それが満期を迎えたときにもう一度現地に赴いて出金する。金利は5%〜10数%になるので預金という比較的安全な運用でかなりの利息収入がある。
高金利通貨預金のリスクと手間
この場合の不確定要素としては為替変動、そしてカントリーリスクがある。満期のときの現地通貨の為替レートが定期預金を組んだときより下落していれば日本円に戻したときに目減りするので実質的な金利収入は少なくなる、逆に現地通貨の為替レートが上昇していれば為替差益が利息収入に上乗せされる。
カントリーリスクは銀行の破綻リスクや預金保護の有無、現地通貨や外貨の持ち出し制限などその国が抱える様々な不確定要素である。出金のときにもう一度そこに出向くというコストや手間も海外での高金利定期預金を利用する際に考慮に入れておく必要があるだろう。
スワップポイントとは
海外の高金利通貨で運用をしながら現地に出向くということが必要のない方法がある。「スワップポイント」の利用である。スワップポイントはFX(為替証拠金取引)をする際に受け取ったり、支払ったりする金利の差額である。FXの取引は通常数倍のレバレッジをかけて取引をする。
これはお金を借りて取引をしているのと同じことなのである。例えば円売り豪ドル買いのポジションを持つと日本円の借入金利と豪ドルの預金金利が発生することになる。2017年10月時点で日本の金利は0.1%なのに対し豪ドルの金利は1.5%なので差し引き1.4%分の金利(スワップポイント)がもらえる。このスワップポイントは日割り計算で毎日ポジションに付与されることになる。
逆に豪ドル売り円買いのポジションを持つと金利を支払う立場になるのでポジションの金額は毎日スワップポイント分だけ目減りしてゆくことになる。FXは外貨を売買してその為替差益、いわばキャピタルゲインの獲得を狙ってゆく投資という印象が強いがこうしてスワップポイントという利息を得る形の運用もできるのだ。
スワップポイントは1万通貨当たり数円〜数十円程度なのでまとまった金利収入を得るにはポジションを長期間保持しなければならない。デイトレードとかスイングトレードという短期の売買でキャピタルゲインを積み上げてゆく手法とは対極に位置するもう一つのFX投資のかたち、それがスワップポイントということになる。通貨の発行国の政策金利が高ければ当然その通貨を買ったときのスワップポイントは大きくなる。政策金利は随時変化するが2017年10月の現時点で金利の高い通貨には以下のものがある。
高スワップポイント通貨(2017年10月)
ブラジルレアル:8.25%
トルコリラ:8.00%
南アフリカランド:6.75%
ニュージランドドル:1.75%
オーストラリアドル:1.50%
ブラジルレアルやトルコリラを買って一年間保有すればざっくり8%前後の金利を手にすることができることになる。(実際にレアルを取引できるFX業者はかなり少ないが。。)海外で定期預金する場合と同じように通貨の保有している間の為替変動リスクは発生するが、その国に行く手間や費用がかからないのはスワップポイントを利用するメリットと言えるだろう。
スワップポイント支給額の見方
ちなみにスワップポイントは一日当たりの支給額(控除額)でFX業者毎に設定されている。例えば、
円売り米ドル買い:+48円
米ドル売り円買い:-50円
という具合である。これは日本円で米ドルを買って米ドルを持っている状態で1日あたり48円のスワップポイントがもらえるということであり、逆の場合は1日あたり50円が引かれるということである。
このスワップポイントはFX業者によって異なり、また上記のように受け取り額と支払い額が必ずしも同じ金額にならないこともままある。FXの両替手数料にあたるスプレッドが狭ければ(手数料が安ければ)スワップポイントは低くなりがちだったり、スプレッドは広いけどスワップポイントは高いという業者もある。売買を頻繁にやるなら前者が有利だがスワップポイントの金利収入を目的とするなら後者の方が適当である、ということになる。