日本には憲法の規定で軍隊がない。しかし実質的な戦力として自衛隊を保持しており、専守防衛という原則の下でしか武力行使をできないとはいえその装備は強い経済力を背景にして世界有数、アジアではトップの兵力を持っている、、というのはひと昔前のイメージだ。現在は通常兵力(核兵器・生物化学兵器以外の兵力)だけでも中国に凌駕されている。

Global Firepower(GFP)の「国別軍事力ランキング」2020年度版による日本と中国の軍事力の比較は以下の通り。

日本の防衛費

【日本の軍事力】
現役兵員数(人):247,160
予備役兵員数(人):56,000
航空機(機):1,561
戦車(台):1,004
主要艦艇(隻):155

【中国の軍事力】
現役兵員数(人):2,183,000(日本の8.8倍)
予備役兵員数(人):510,000(日本の9.1倍)
航空機(機):3,210(日本の2.1倍)
戦車(台):3,500(日本の3.5倍)
主要艦艇(隻):777(日本の5倍)

「中国は確かに規模は大きいが装備が古かったり、遅れていたりするのでは?」とついつい思いたいところだが技術大国にもなった中国、もちろんそんなことはない。一例だが、日本が開発できない第5世代と呼ばれる最新のジェット戦闘機を作れるのはアメリカ、ロシア、中国の3カ国だけ。他の兵器のレベルも推して知るべし、隣国の軍事的脅威は急激に増大している。あってなならないことだが、仮に今中国が尖閣諸島の強行占領に動いたら守ることは難しいのではないかという意見も一部にある。

日本の防衛予算は約5兆円、中国は約25兆円。5倍に上る投資でいつのまにか日本を追い抜き、どんどん引き離しているのだ。(ちなみに有事の際には75兆円の軍事予算で中国をどんどん引き離しているアメリカが同盟国としての日本への加勢が見込めるという要素はある。それに頼りきることの是非は別としてだが、、)

日本の文教と科学振興

2020年のノーベル賞では3年ぶりに日本人の受賞がなかった。すでにノーベル賞を受賞した先生方によれば今後日本人の受賞者は減ってゆき、ゆくゆくはいなくなってしまうという危惧が大きくなっているようである。原因は日本の研究者が激減していること。国立大学などの研究機関では国からの予算が減らされ、独自で研究資金集めをやらなければならなくなっている。

企業に研究資金を出してもらうためには利益に直結しやすい応用研究が主流とならざるを得ず、モノになる確率は低いが成功すれば世界をリードすることができ、ノーベル賞受賞の対象にもなりやすい基礎研究をおこなう環境がどんどん失われているというのだ。

国を守るための投資としての「防衛費」国の将来の発展への投資としての「文教及び科学振興費」

上記のような状況を鑑みるとここにもっと予算をつぎ込むべきだろう、という思いがわいてくるのは日本人として自然だ。しかし金が無尽蔵にあれば「もっと出せ!」でも良いが、実際はそうも行かない。限りある予算の中ではどれかを増やせばどれかを減らさなければならない。

成長より安心に費やされる予算

2020年度の日本国の国家予算の内訳は以下の通り。

社会保障費:35.9兆円(34.9%)
地方交付税交付金:15.8兆円(15.4%)
公共事業:6.9兆円(6.7%)
文教及び科学振興:5.5兆円(5.4%)
防衛:5.3兆円(5.2%)
国債費:23.4兆円(22.7%)
その他:10.0兆円(9.7%)

割合として大きいのは社会保障費、国債費、地方交付税交付金だ。国債費は税収では足りない分の借金の利払いなので削ることはできない。もし削れば次から誰も貸してくれるまい。要するにデフォルトへと続く道となる。

お金の足りない自治体に渡す地方交付税交付金はこれでも過去数年間にわたって減ってきている。今後も市町村の合併などの再構築を絡めて地道に削減の努力をしてゆくしかないだろう。

社会保障費、、もっとも大きく、しかしもっとも急速に増え続けている部分だ。ここが増え続けているから防衛費や文教費、公共事業など安全保障や将来の発展に寄与する予算が圧迫されて増やせないといっても過言ではない。個人的にも経験があるが特に病人や介護が必要なときには日本の社会保障の手厚さはありがたい。社会保障費が国民に大きな安心を与えてくれているのは確かだ。

しかし残念ながら成長は見込めないお金の使い方であるのも否定できない事実である。

2020年のGDPランキングは、

1位:アメリカ(20兆ドル)
2位:中国(13兆ドル)
3位:日本(5兆ドル)
7位:インド(2.7兆ドル)

である。

今から30年後、
2050年時点でのGDPランキングは
(あくまでも一つの予測であるが)

1位:中国(50兆ドル)対2020年比:385%
2位:アメリカ(29兆ドル)対2020年比:145%
3位:インド(23兆ドル)対2020年比:852%
4位:日本(7兆ドル)対2020年比:140%

という具合になっているという。

三つの超大国の3分の1〜7分の1の経済規模になっている原因は間違いなく現在にある。

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