世界のコロナウィルスの感染者数は2020年7月15日時点で約1,330万人。死亡者数は約58万人。致死率は約4.4%ということになる。

世界の感染者数をほぼリアルタイムで配信している米ジョンズ・ホプキンス大学のデータで毎日のように感染者数を見ていた3月末頃感染者数が100万人を超える瞬間を見ていたので、それから3ヶ月半を経て13倍以上になったということか。1月に中国でコロナウィルスによる肺炎の増加が報道されるようになり、1月23日に武漢がロックダウン。その後イタリアやスペインをはじめヨーロッパでの増加が目立つようになり、3月下旬からアメリカで急増。

新型コロナ流行2020年7月中旬の現在地

今は累計感染者数では多い方からアメリカが約340万人、ブラジルが190万人、インドが94万人、ロシアが74万人。イタリアの感染者数がすでに10位以下になっているというのは気づかなかった事実だ。日本では4月7日から5月25日まで緊急事態宣言が発令され一旦は感染者増加に歯止めがかかったもののここ最近また増加傾向にあり、東京で一週間以上100人以上の感染者が出ている。なかなか収束のイメージを持つことも難しく、歯がゆい状態が続いている。

さて人が集まることが大きなリスクとなり、国をまたいだ移動なども大きく制限される中、一部を除いてほぼすべての産業が深刻な打撃を被っている。日本の2020年1月〜3月の実質GDPは年率で-3.4%、8月に発表される予定の4月〜6月分はもっと深刻な数字が出るはずだ。2020年の世界全体のGDPの落ち込みは-3%とも-5%とも言われている。

各国経済対策後はインフレ?それともデフレ?

各国の政府や中央銀行は債券買い入れや財政支出などで大幅な経済対策を打ち出している。その額、少なくとも15兆ドル(約1,605兆円※USD1=JPY107で換算)に上ると言われている。1,600兆円は日本のGDPの3倍以上、国家予算の16倍に当たる金額である。これだけの巨額資金を放出して、コロナ収束後の世界経済はどうなるのか?

インフレになる、ならない、あるいは逆にデフレになる、様々な意見が錯綜しているようだ。簡単に言えば、インフレになるというのは「物価が上昇する」ということであり、デフレは「物価が下落する」ということである。インフレになるという意見は割と直接的である。世の中に出回る財・サービス(人間の欲求を満足させるもの)の量が変わらずにそれを買うお金の方が増えれば財・サービスの価格が高くなるのは自然なことだからだ。財・サービスの量は変わらないどころか生産や移動などの制限でむしろ少なくなっているので余計にインフレの圧力は高まるという考え方である。

現在世界の株価はおしなべて上昇基調にある。これはある意味不思議なことだ。世界のGDPが大きくマイナスになると予想される中、世の中の多くの企業の業績が楽観的なはずがない。それなのになぜ株価が上昇するのか?株価だけでなく、米国債の利回りは非常に低い(価格は高い)水準にあるし、商品や暗号通貨の価格も株価同様コロナ流行で一旦暴落して経済対策のあとに上昇したものは多い。一方でインフレにならないあるいはデフレになるという考え方の基は物価が金融政策によるマネーの量の調整で決まる、というかつての通説が最近はあまり通用しなくなっているというところにあるらしい。

すなわち以前は金利を下げたり、金融緩和をおこなえば物価が上昇したし、インフレが行き過ぎるようなら利上げや引き締めで物価の沈静化を図ることができた。しかしリーマンショック後にアメリカのFRBは何度かの大規模なQE(量的緩和)をおこなってそのバランスシートは2010年までに5倍に膨らんだが当初目標としていたインフレ率2%を達成することはできなかった。これと同じことが日銀にも起こっていて2013年に始まった「黒田バズーカ」とか「異次元緩和」と呼ばれる金融緩和でバランスシートを4倍にしたが目標であるインフレ率2%どころか1%にも届かなかった。

低消費時代のマネーの行き先

なぜそうなったのかという答えを見つけるのは簡単なことではないが、個人的に最近強く感じる「今あまり欲しいものがない」というのは結構大きいのではないかと思う。金融政策が効いていた頃は「お金さえあれば今までなかった冷蔵庫が、テレビが、洗濯機が、マイカーが買える!」ということがあったはずだが、最近ではスマホを手に入れて以降「自分も買わなければ!」というものがない。

社会的距離をとる習慣も定着してきて、パソコンやスマホを通じて仕事をしたり、飲み会をやったりすることもできる。時間と手間をかけて移動することもなく、近くのコンビニで酒を買ってくるだけなのでとても安上がりだ。あくまで物価の上がりそうもない一例に過ぎないが。しかしコロナ前よりマネーの量が増えているというのは確かであり、そのせいで金融市場が活性化しているのは間違いないだろう。まだわからない部分はあるがこれがひとつの答えであるような気もする。

つまり今後モノの価格は上がらないかも知れないが、その分だけ金融資産の方がインフレ状態になっているのでそちらに資金を入れている人といない人では大きな差がついてしまう可能性がある、ということである。

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